アフターピル市販化から1カ月…「コンドームなしで梅毒増加」の懸念は?
望まぬ妊娠を防ぐ「緊急避妊薬」(別名アフターピル)。性交後72時間以内であれば、高い確率で妊娠を回避できるこの薬は、8月27日に厚労省が市販化方針を打ち出して以降、医師の処方箋なしで薬局購入が可能となった。事前予想では「コンドームの使用が減少して性感染症が増える」とも言われたが、実態はどうか?
国立健康危機管理研究機構が7日に発表した「感染症発生動向調査速報データ」によると、代表的な性感染症である梅毒の第35週(8月25~31日)から第39週(9月22~28日)での新規感染届け出数は870件。年初から第39週までの累計数は1万431件だった。
一方、2024年の同時期のそれは1008件。累計数は1万766件で、梅毒に関しては緊急避妊薬の市販化がスタートして以降、大きく減少していることになる。なぜか? 「プライベートケアクリニック東京新宿院」の尾上泰彦名誉院長が言う。
「アフターピルとは関係なく、自治体を中心にSNSやメディアでの梅毒を含めた性感染症防止の啓発が増えたことが功を奏したことだと思います。とくに梅毒感染が最も多い若い女性を中心に、梅毒感染に注意を払うようになったことが大きい。アフターピルについては、安易な性交が増えるのではないか、との考えが先に立ち、情報発信や教育が不十分でその存在や市販化を知らない人も多いのかもしれません。また、医師の処方箋がいらないとはいえ、購入するには薬局で薬剤師の面談が必要で、若い女性にとってはまだハードルが高いと思います。ただし、今の女性は意識が高い。アフターピルの存在を知ったにせよ、自分の身を守る術は心得ていて、アフターピルが性感染症である梅毒を劇的に増やすことは、あまり考えられません」