「死ともののけ」斎藤たま著
「死ともののけ」斎藤たま著
1970年代から日本中を歩き調査してきた在野の民俗学者によるリポート。各地に残る死や葬送、墓制をめぐる習俗の中から「もののけ(モノ除け)」=「魔除け」の伝承を集め紹介する。
著者は、葬送儀礼の根幹にあるのは、生者対死者の図式ではなく、生者及び死者とモノ=災いなす荒ぶるものとの対決だとする。
その視点から、外で死んだ人を家に入れるときには箕(農具)を裏返しにして3回あおぐ、死者や重病人が出た家に行くときにはニンニクを身につけるなど、各地で聞いた習俗の共通点や理由を考察。寝かせた死体の上に魔除けのために置く刃物や箒、湯灌や墓穴を掘る人が身につける藁、出棺に先立って参列者に出す「でたち飯」など、足で集めた記録から日本人の死生観、葬送観を導き出す。 (KADOKAWA 1650円)