著者のコラム一覧
井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

URESICA(ウレシカ)西荻窪「作家さんたちと一緒につくっている店、みたいな感じです」

公開日: 更新日:

 西荻窪駅から続く「北銀座通り」に面した2階建ての建物。小窓に、すてきな装丁の9冊が並んでいる。扉を開ける。と、絵本やアート本、それに少々の一般書が静かに迎えてくれた。

「こんにちは」と店の奥にいらした店主、カマタユリコさんに挨拶に行く。そのとき目にしたのが、柔らかな色合いの洋書が並ぶ棚だった。

「昔、旅先で買ってきたチェコやハンガリーの古本ですね。でも今はそっちメインじゃなくて」

 カマタさんは、2005年に雑貨と海外古書を扱うオンラインストアを始めた。「気づいたら本が増えていて、“本屋っぽく”なっていました」って、なんだかうらやましい展開だ。10年に経堂に小さな店を持ち、ここ西荻窪に移って11年になるそう。店名は、「うれしい」の意の故郷・長崎の方言と、「共に暮らす、育てる」を指すアイヌ語から。

 絵本メイン、ですね?

「はい。つながりができた作家さんたちと一緒につくっている店、みたいな感じです。2階がギャラリーなんです。見てもらう場所を持ちたくて始めたら、どんどん面白くなって」

メインは絵本、企画展と連動した選書も勢揃い

 というわけで、先にギャラリーを拝見。「長崎望遠鏡展」を開催中だった。「東の棟方(志功)、西の田川」と言われたという田川憲による長崎港を描いた版画が中央に。中国風・洋風の建物、湾、船……。その昭和前期の風情を、河井いづみ、山下アキら長崎ゆかりの現代作家たちのカラフルな絵が囲んでいる。時を悠々と超えた、まさに「望遠」ワールドだ。「長崎、行きたくなりました」とカメラマン、ぽつり。

 常に、企画展を催している。1階の絵本棚には、ギャラリー展示をした作家の絵本もわんさか。たけがみたえ著「どきどきしてる」、高橋和枝著「うちのねこ」、庄野ナホコ著「ラッテとふしぎなたね」、蜂飼耳著・牧野千穂イラスト「うきわねこ」……。猫、多いですね、と申し上げると、カマタさんにっこり。

「小出版もやっていて、これ、作ったんですよ」と「NEKO100TEN(ネコ100テン)」なるものを見せてくれた。50人の作家が猫の絵を2点ずつ。切り取って、ポストカードと豆本にできる仕組みだ。すっごくいい。

◆杉並区西荻北2-27-9/JR中央線・総武線西荻窪駅北口から徒歩7分/℡03.5382.0599/正午~午後7時、火・水曜休み 
※「長崎望遠鏡展」は13日まで

ウチらしい本

「庄野ナホコ作品集 Circus of Wonders」

 表紙が真っ赤な布張り、箔押し入り。見るからに丁寧な作りの一冊。

「こちらから、『作りましょうよ』と持ちかけて実現したんです。雑誌ブルータスの『本屋好き。』特集のカバーイラストも描かれている庄野ナホコさんの初めての作品集。流氷のサーカス、猫のバレリーナ、本屋のシロクマ、読書する鳥など、ユーモアと哀愁を併せ持つ動物や人物。近年15年の仕事から190点を収録。デザイナーさんが一編の映画のように構成してくれました」

(URESICA刊 6600円)

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