「時代に挑んだ男」加納典明(51)拘留10日間、「同房の殺人犯らが『ファンです。肩を揉みます』って(笑)」
「拘置所では木村一八と一緒だった」
加納「81歳なんて若造だよ。まだまだこれから挑戦だよ」
増田「すごいパワーですね」
加納「俺は永遠の挑戦者でいたいね」
増田「拘置所での生活はどんなものだったんですか」
加納「拘留は10日間だったと思う」
増田「その間、他の人たちとの交流は」
加納「うん。 面白かったよ。 同房に『おまえ何やった』って聞いたら『人殺してます』とか『詐欺師です』とかね」
増田「それはすごいですね」
加納「もともと俺のファンだったみたいだね。だから『肩揉みます』とか『マッサージします』とか、みんなで大事にしてくれてさ(笑)」
増田「はっはははは(笑)」
加納「俺はクリエイターだから、やっぱり人間に興味があるんだよ。だから面白かったよ。その後、彼らとは会ってないけど、どこからも聞こえてこないんだよね。『拘置所で加納はこうだった』とか。つまり絶対に陰口みたいなことを言わないやつらだった。人と人としての付き合いがきちんとしてたんだよ。だから俺も彼らを人間として認めたよ」
増田「そういう意味で、罪を典明さんだけに着せた外の人たちより人情味がありますね」
加納「うん。そうだよ。だからさ。そういう経験もその後の仕事にも活きたと思う。特異な旅という感じだったね。普通じゃできない経験だから」
増田「拘置所では木村一八さんとも会われたそうですね」
加納「うん。一八が入ってたんだよね。なんかの事件で」
(第52回につづく=火・木曜掲載)
▽かのう・てんめい:1942年、愛知県生まれ。19歳で上京し、広告写真家・杵島隆氏に師事する。その後、フリーの写真家として広告を中心に活躍。69年に開催した個展「FUCK」で一躍脚光を浴びる。グラビア撮影では過激ヌードの巨匠として名を馳せる一方、タレント活動やムツゴロウ王国への移住など写真家の枠を超えたパフォーマンスでも話題に。日宣美賞、APA賞、朝日広告賞、毎日広告賞など受賞多数。
▽ますだ・としなり:1965年、愛知県生まれ。小説家。北海道大学中退。中日新聞社時代の2006年「シャトゥーン ヒグマの森」でこのミステリーがすごい!大賞優秀賞を受賞してデビュー。12年「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」で大宅壮一賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。3月に上梓した「警察官の心臓」(講談社)が発売中。現在、拓殖大学客員教授。