“無税”で上場したソニーFGは特別扱いか…後続企業に立ちはだかる高い壁
9月24日、元ソニー副会長の伊庭保さんが、敗血症で死去した。89歳だった。1990年代後半のソニーの黄金期を牽引した番頭役で、日本におけるCFO(最高財務責任者)の先駆けだった。
2004年にはソニーフィナンシャルホールディングス(現ソニーフィナンシャルグループ<FG>)の会長兼社長に就き、国内で初めて保険会社と銀行を傘下に持つ金融持ち株会社を設立した。
歴史のあやか。その伊庭氏が生みの親であるソニーFGが9月29日、東京証券取引所プライム市場に上場した。
初値は205円と参考値段を37%上回り、終値でも参考値段を超えた。新株発行や公募、売り出しを伴わない直接上場(ダイレクトリスティング)で、2000年以降で初めての事例となった。終値を基にした時価総額は約1兆2400億円。上場の鐘を鳴らしたのは、元金融庁長官でソニーFG社長に就いた遠藤俊英氏。「遠藤氏は、現役時代、異業種の金融業参入を推し進めた行政官のひとり。因果は巡るね」とメガバンク幹部は感慨深げだった。
ソニーFG上場で見逃せないのは、ソニーグループは23年度の税制改正で認められた「パーシャルスピンオフ」という制度を利用し、20%未満の株式を継続保有しつつ、残るソニーFG株を株主に分配したことだ。