【追悼】仲代達矢さん「狂気と正気の狭間で」生き抜いた92年…最愛の母と愛妻と愛弟子たちと“真っ白な灰”になるまで

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■若きもの 名もなきもの ただひたすら 駈けのぼる

 もうひとつ、無名塾の母のような存在であった恭子さんに代わって、教え子たちのことをいつも気にかけていた。公演が決まると、誰よりも早く稽古場に立ち、「今日はゆっくり、軽く」などと言いつつ、はじまると、弟子よりも稽古に打ち込んでみせた。だが、弟子たちとの食事では「何にでもソースをかける」というようなエピソードもあり、一堂に会した公演への打ち合わせでは「何か言いたいことがあるひとは、メールください」などと言って、笑わせていた(仲代さんはメールもSNSも一切やっていない)。

 無名塾の稽古場の上の階にある自宅スペースとは、小さなエレベーターで昇り降りしていた。稽古後、エレベーターの小窓を指先でコツコツ叩いて見送る弟子たちに、同じように内側からコツコツとやって仲代さんは応え、その姿が1階から見えなくなっても、コツコツと音を響かせた。

 その自宅スペースの書斎で、話を伺ったとき、仲代さんは人さし指で自分のこめかみをコツコツやって、こう言った。

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