【追悼】仲代達矢さん「狂気と正気の狭間で」生き抜いた92年…最愛の母と愛妻と愛弟子たちと“真っ白な灰”になるまで

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■「『仲代達矢』を生き切って」

 
 そのタイトル通り、チャップリンのフレーズとされる「最高傑作は次作」とばかりに仲代さんは舞台に立ち、映画に出演し続けた。石川県七尾市の無名塾ゆかりの能登演劇堂の公演では、満身創痍に見えながら、幕が上がると背筋をシャンと伸ばす姿を目の当たりにした。2015(平成27)年に文化勲章を受章しても、だ。「あしたのジョー」の矢吹丈のように、「真っ白な灰」になるまで続けたい、つまりまだ完全燃焼していないということですかと質問してしまったこともある。

 いつものように笑って、何かコメントをもらったが、1996(平成8)年に病気で亡くした妻で劇作家、演出家の故宮崎恭子さん(享年65)の存在と言葉が大きかったのではないだろうか。膵臓がんと診断され、余命を告げられても「仲代には大切な仕事がありますから、絶対に知らせないでください」と、俳優業を後押しした恭子さんは「『仲代達矢』を生き切って」という遺言を残した。仲代さんが「ゆっくり眠るのは、妻の隣に入ってからでいい」と言っていたことも思い出す。

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