【追悼】仲代達矢さん「狂気と正気の狭間で」生き抜いた92年…最愛の母と愛妻と愛弟子たちと“真っ白な灰”になるまで

公開日: 更新日:

「死ぬのは怖くないですね。ええ、全く」

 このほど92歳で亡くなった仲代達矢さんは平然と、事もなげにそう言っていた。2011年2月からスタートした『日刊ゲンダイ』のシリーズ「私を語る『狂気と正気の狭間で』」でのインタビュー。御年80にはとても見えないたくましい体躯と、腹の底まで響くような声音に圧倒され、背中に汗をかきつつ伺った理由は、戦争体験にあった。

 空を覆いつくすほどの焼夷弾が東京に投下された1945年5月の山の手大空襲など、目の前で少女の小さな体が吹き飛ぶ瞬間を目の当たりにしたりしながら、仲代さんは生き延びた。8月15日になると「またこの日が来てしまいました」と言い、「亡くなった方々に申しわけないという思いがずっとある」と振り返っていた。

 その命を無駄にすることはできない。貧乏のどん底のなか、女手ひとつで育ててくれた母愛子さんを説得し、俳優の夢をかなえ、かつそれで食べていくことを誓った。六本木にあった俳優座養成所へと続く坂を駆け上がった青春時代のシーン。それから始まる三島由紀夫に黒沢明、中村錦之助(萬屋錦之介)、三船敏郎、勝新太郎ら、あまたのスターとの交流譚は映画のような迫力と面白さがあり、京都で一升瓶を一晩に7本転がしたというエピソードには驚いて、思わず聞き返してしまった。インタビューは30回を超えて、2014年3月に単行本となった。タイトル「未完。」は仲代さんがつけた。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    農水省「おこめ券」説明会のトンデモ全容 所管外の問い合わせに官僚疲弊、鈴木農相は逃げの一手

  2. 2

    早瀬ノエルに鎮西寿々歌が相次ぎダウン…FRUITS ZIPPERも迎えてしまった超多忙アイドルの“通過儀礼”

  3. 3

    2025年ドラマベスト3 「人生の時間」の使い方を問いかけるこの3作

  4. 4

    武田鉄矢「水戸黄門」が7年ぶり2時間SPで復活! 一行が目指すは輪島・金沢

  5. 5

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  1. 6

    大炎上中の維新「国保逃れ」を猪瀬直樹議員まさかの“絶賛” 政界関係者が激怒!

  2. 7

    池松壮亮&河合優実「業界一多忙カップル」ついにゴールインへ…交際発覚から2年半で“唯一の不安”も払拭か

  3. 8

    維新の「終わりの始まり」…自民批判できず党勢拡大も困難で薄れる存在意義 吉村&藤田の二頭政治いつまで?

  4. 9

    日本相撲協会・八角理事長に聞く 貴景勝はなぜ横綱になれない? 貴乃花の元弟子だから?

  5. 10

    SKY-HI「未成年アイドルを深夜に呼び出し」報道の波紋 “芸能界を健全に”の崇高理念が完全ブーメラン