著者のコラム一覧
スージー鈴木音楽評論家

1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966-2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。

『恋をするなら』分厚いコーラスと米国の若い音楽家との共鳴が響き合う

公開日: 更新日:

アルバム『ラバー・ソウル』(1965年12月3日発売)⑦

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■『恋をするなら』

 原題は「イフ・アイ・ニーディッド・サムワン」。いわゆる「仮定法過去」で邦題は直訳。

 ちなみにアルバム『ハード・デイズ・ナイト』収録『恋におちたら』(イフ・アイ・フェル)も、もちろん仮定法過去。

 では、仮定法過去完了は? ありますね。『恋する二人』(アイ・シュッド・ハヴ・ノウン・ベター)。

↓………ここから続き………

 さて、『恋を~』はジョージの曲。『ひとりぼっちのあいつ』同様、上からポール、ジョン、ジョージの三声コーラス(それぞれ2回重ねているので計「六声」)が美しいのだが、上が重くて、いちばん下のジョージのリードボーカルが、よく分からなくなる。


「イフ・アイ・サング・アローン」……「もし1人で歌ったなら」とジョージは心の中でつぶやいたのではないか。ただ来日公演でのジョージの歌は、なかなかに不安定だったので痛しかゆし。

 そんなジョージが弾くキラキラした音の12弦ギターと、分厚いコーラスが響き合う感じは、明らかに当時の言葉でいう「フォーク・ロック」の音。つまりはザ・バーズによるボブ・ディランの有名なカバー『ミスター・タンブリン・マン』(65年)のあの音だ。

 ビートルズとアメリカの若い音楽家が、影響を受け合っている。いい時代。「もしもあの時代に生きていたら」と私は心の中でそっとつぶやく。

■『君はいずこへ』

 原題「アイム・ルッキング・スルー・ユー=君が透けて見える」と邦題は乖離があるが、歌詞の内容的には問題なし。問題があるとすれば、この邦題を読むたびにチャーリー浜(ポールと同じ1942年生まれ)を思い出すことぐらいか。ごめんくさい。


 このあたりから、ポールがいろんな声を使い分け始める。『ミッシェル』とこの曲のボーカルが、同一人物なのだから、なかなかの声色使いだ。

 とにかくキーが高く、ラストはかなりシャウトしている。

 実は「テイク1」が『ザ・ビートルズ・アンソロジー2』に入っているのだが、キーは『ラバー・ソウル』版(A♭)より半音低く(G)、リズムもどことなく牧歌的である。


 痴話喧嘩の歌なので、歌っているうちに、彼女への怒りで「ムキーッ」とテンションが上がってしまった結果、キーまで上がってしまったか。

 そんなポールの高音シャウトが好きな方には、解散後のソロ曲『モンクベリー・ムーン・デライト』(71年)がおすすめだ。途中からのシャウトは、チャーリー浜というより、コウメ太夫みたいになってしまいました。チックショー!



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【連載】スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ

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