『サムシング』サザンの「いとしのエリー」にも影響を与えた歌い出しクリシェ
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アルバム『アビイ・ロード』(1969年9月26日発売)②
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■『サムシング』①
「ソングライター・ジョージ、ここにあり」と高らかに宣言したような名曲といっていい。
ビートルズのキャリアを野球に例えると、チーム「ジョージズ」が九回裏ツーアウトから放ったホームランのよう。そして相手チーム「ジョンとポールズ」と同点に追いつき、延長戦としてのソロ活動に堂々と進んでいくという感じの曲だ。
楽曲の優美さには、俗に「クリシェ」と呼ばれる半音下降進行が効いている。聴いているとグッとくる、日本人がとにかく大好きなコード進行。
歌い出し(試聴リンク再生時間「0:05」から)のメロディーは、絵に描いたように半音ずつ沈んでいく。
「♪(ドの音)サムシング・イン・ザ・ウェイ・シー(ここからシ)ムーブズ(ここからシ♭)アトラクツ・ミー・ライク~」という具合である。
まぁ、言ってみれば、まったく奇をてらわないド直球のクリシェなのだが、その分、心に残りやすい。
この「歌い出しクリシェ」は、のちの音楽家に大きな影響を与えた。日本でいえば例えばサザンオールスターズ『いとしのエリー』(79年)が代表的な「サムシング・チルドレン」といえる。
あのネットフリックスのガス人間も「♪泣かした事もある~」のバックで流れるクリシェにグッとくることで、全身が動き出すのではないか。
実は『サムシング』にはもう一つクリシェがある。「0:27」から「♪アイ・ドント・ウォナ・リーブ・ハー・ナウ ユー・ノウ・アイ・ビリーヴ・アンド・ハウ」のバックで「ラ↓ソ♯↓ソ↓ファ♯」という半音下降音列が動いている。
そして転調。「1:11」のところの目の覚めるような転調たるや(キーがCからAに)。視界がパーッと広がる感じになるではないか。
歌い出しでグッとクリシェ、途中でもグッとクリシェ、そしてパーッと転調。九回裏ツーアウトからのホームランの舞台裏では、このような「グッ、グッ、パーッ」が仕掛けられているのだ。
また「ジョージの曲ではポールのベースが攻める法則」は、ここでも発動。でも、今回は「悪目立ち」ではなく、曲の中に、素直に馴染んだ形で、しびれるような美メロを弾いている。ある意味、歌メロよりも美しい。ポール好きのベーシストが全員コピーする美メロだ。
という『サムシング』、フランク・シナトラいわく「史上最高のラブソング」。まさに「ソングライター・ジョージ、ここにあり」。 (この項つづく)
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