著者のコラム一覧
増田俊也小説家

1965年、愛知県生まれ。小説家。2012年「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」で大宅壮一ノンフィクション賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。現在、名古屋芸術大学客員教授として文学や漫画理論の講義を担当。

「時代と寝た男」加納典明(5)ムツゴロウさん編スタート…なぜ俺は動物王国の住人になったのか

公開日: 更新日:

 小説、ノンフィクションの両ジャンルで活躍する作家・増田俊也氏による新連載がスタートします。各界レジェンドの一代記をディープなロングインタビューによって届ける口述クロニクル。第1弾は写真家の加納典明氏です。

  ◇  ◇  ◇

増田「加納さんは作家の畑正憲*さん、いわゆるムツゴロウさんの動物王国に何年か一緒に住んでいたんですよね」

※畑正憲(はた・まさのり):作家。ナチュラリスト。愛称ムツゴロウ。1935年福岡県に生まれ、幼少期を満州で過ごす。東京大学理学部生物学科大学院修士課程中退。学研映画で科学映画の制作に携わった後、エッセイ集『われら動物みな兄弟 愛と生命の科学』でデビュー。1970年代に北海道に移住して無人島に住み、その後「動物王国」を設立するなどした。著書多数。2023年、87歳没。

加納「よくご存じですね(少し驚いた様子)」

増田「若いとき畑さんに傾倒してたんです。小学生のころから」

加納「とすると、フジテレビドキュメンタリー、例の『ムツゴロウとゆかいな仲間たち』*シリーズが始まる前?」

※ムツゴロウとゆかいな仲間たち:フジテレビ系列局で1980年から2001年まで特別番組として逐次放送されたドキュメンタリー。動物王国での畑正憲やスタッフたちと、動物たちとの交流を描き、視聴率30%を超える怪物番組となった。

増田「ええ」

加納「それはかなり早いですね。彼が本格的に出始めたのは昭和40年代、毎日新聞が推して無人島の嶮暮帰島に1年間移住してブレークして。自給自足を目指した生活でね」

増田「あれが単行本『ムツゴロウの無人島記』*として出たのが1972年で、僕は小学校の1年生ですが、3年生のときに父の本棚で見つけて、繰り返し読んではまったんです。そこから父のものを漁っては読み、中学からはリアルタイムで。僕が彼を敬したのは作家としての彼、書き手としての彼で、だから文体が似てるって今でもときどき言われるんです」

※ムツゴロウの無人島記:1971年に北海道の無人島、嶮暮帰島に妻と娘とともに移住、そこでヒグマのどんべえや秋田犬のグルなどと暮らした1年間の記録を書籍化したもの。ベストセラーとなった。

加納「強い傾倒ですね。もしかして僕が王国に住んでいたから今回こうしてインタビューを依頼してくれたんですか? 僕から見ていると、増田さんはそれ以上に強く僕にこだわっているように見えるんですが」

増田「じつをいうと畑さんの評伝を書く準備をずっと進めていたんです。それが『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』の次の僕のノンフィクションの目玉だったんです。だから畑さんが生きているときから加納さんにお会いして詳しく話をお聞きする予定でした」

加納「へえ。そうなんだ。増田さんが書くムツさん、すごいことになりそうだ。ぜひ読みたかったね」

増田 「木村政彦を連載している間も手紙や電話をやりとりしていました」

加納「それ、畑さんの生前だよね。もちろん」

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    亡き長嶋茂雄さんの長男一茂は「相続放棄」発言の過去…身内トラブルと《10年以上顔を合わせていない》家族関係

  2. 2

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  3. 3

    「時代と寝た男」加納典明(17)病室のTVで見た山口百恵に衝撃を受け、4年間の移住生活にピリオド

  4. 4

    中居正広氏に降りかかる「自己破産」の危機…フジテレビから数十億円規模損害賠償の“標的”に?

  5. 5

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  1. 6

    “バカ息子”落書き騒動から続く江角マキコのお騒がせ遍歴…今度は息子の母校と訴訟沙汰

  2. 7

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  3. 8

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  4. 9

    「こっちのけんと」の両親が「深イイ話」出演でも菅田将暉の親であることを明かさなかった深〜いワケ

  5. 10

    長嶋一茂が父・茂雄さんの訃報を真っ先に伝えた“芸能界の恩人”…ブレークを見抜いた明石家さんまの慧眼

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  4. 4

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  5. 5

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  3. 8

    星野源「ガッキーとの夜の幸せタイム」告白で注目される“デマ騒動”&体調不良説との「因果関係」

  4. 9

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  5. 10

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも