【京都ALS患者嘱託殺人事件】わずか16分の犯行。医師は何を聞き、彼女は何を答えたのか
二村監督は林さんの父親や体の自由がきかない難病を患っている人たち、彼女を知る元看護士、ケアの専門家などを取材。林さんの生い立ち、闘病中の患者たちの苦悩などに触れたあと、中盤から嘱託殺人の真相に迫っていく。
取材の過程で大久保の実母に肉薄。彼の内面にある母親との確執を浮き彫りにし、さらに元同僚医師にカメラを向ける。元同僚によって語られる大久保はおよそ殺人犯とは思えない医師としての正当な姿だ。事実、彼を心底敬愛する患者も存在し、スクリーンに登場する。
筆者は不勉強なことに、この事件の裁判をよく知らない。そのため報酬の130万円がどのような形で大久保の手に渡り、彼がこの報酬にどんな思いを抱いていたかという事実に驚かされた。また、亡くなった林さんがヘルパーとの関係に苦しみ、同時に心から死を願っていたという事実もよくは知らなかった。
二村監督は語っている。
「(林さんと大久保の)死へ向かうメッセージの交換には、二人がまるで旅行の計画でも立てているかのような、不思議な軽やかさが漂っていた。この最期の対話は、それまでの『悲惨な被害者』と『冷酷な加害者』という単純な事件像を覆す力を持っていた。二人はなぜこの結末に辿り着いたのか。真相を解き明かしたい一心で、私は取材を重ねてきた」


















