(12)なぜ、夜になると「痛み」が強くなるのか? 体内時計と睡眠、神経の働き
昼間はそれほど気にならなかった痛みが、夜になるとズキズキと強くなる。横になってから痛みが気になり、眠れなくなる。こうした現象には、体内時計や神経系の働きが関係している。ハーバード大学医学部&ソルボンヌ大学医学部客員教授の根来秀行医師が言う。
「痛みは、傷ついた組織から送られる信号の強さだけで決まるものではありません。脳や脊髄が信号をどのように処理するかによっても、感じ方は変化します。しかも、痛みの感じやすさにも、約24時間周期のリズムがあることが研究で示されています」
2022年、学術誌「Brain」に発表された研究では、健康な男性12人を対象に、前腕に熱刺激を与えて痛みの感じやすさを調べた。実験中、参加者は34時間にわたって眠らずに過ごし、照明や姿勢、食事、身体活動などの条件を一定に保った。こうして睡眠や生活環境の影響を抑え、体内時計が痛みの感じ方に及ぼす影響を調べた。その結果、痛みへの感受性は深夜に高まり、午後に低下する傾向が示された。
研究チームの数理モデルでは、この実験で観察された痛み感受性の変動幅の約80%を体内時計の影響で説明できると推定された。一方、覚醒時間の長さに伴う睡眠欲求など、睡眠・覚醒に関係する要因の寄与は約20%とされた。ただし、これは実験で測定した熱刺激に対する痛みの感じやすさについての結果であり、実際の病気による痛みが一律に夜間に強くなることを示したものではない。


















