今泉健司さん<4>失敗乗り越え介護現場で学んだ“女性は神”
2度の奨励会退会という挫折を経て、介護の世界へ。将棋界とはまったく異なる職種ながら、天職と思える職場で生きがいを見つけた。
「僕は人と接するのが好きで、その人が笑顔になってくれたら、それだけでテンションが上がります。だから、利用者さんが僕に心を許して、笑顔を見せてくれるのはとてもうれしい。つらいと思ったことは、あまりなかったですね」
デイサービス(通所介護)、お泊まりデイサービス、高齢者賃貸住宅で炊事、洗濯、掃除、入浴やトイレの介助など、身の回りのことをほとんどサポートする。
「早出、遅番、夜勤もしましたよ。排泄介助に抵抗のある人もいるでしょうけど、僕はすぐに慣れた。『今日は出て良かったね』という気持ちになるのに1週間もかかりませんでした」
一人暮らしが長く、炊事や洗濯、掃除は、お手の物だったか。
「いや、初歩的な失敗がすごく多かったです。たとえば、風呂の栓をし忘れたり、『洗濯しといてね』と言われ、洗濯機に洗濯物を入れてスイッチを入れたのはいいけど、干すのを忘れてしまう。一人暮らしの時は、コインランドリーで洗濯から乾燥まで一気に済ませていたので……。『肉じゃがを作って』と言われても、作り方がよくわからなくて、焦がさないようにと水を入れ過ぎて作り直したり。一人暮らしをしていたころは、外食かカップ麺ばかり。『洋麺屋五右衛門』で働いていた時は、レシピ通りに作っただけなので」