萩原賢一さん<3>入院を嫌がる妻を最期まで自宅で介護した
萩原賢一さん(83歳・中学卒)#3
79歳で胃がんが見つかり、入院した萩原さん。すでに、この時、奥さんの体調もよくなかった。
「もともと、女房は、若い頃から、健診のたびに、肺に影が見えるから気をつけるようにと言われていました。私が入院した時、本当はずいぶん調子を崩していたようで、義理の妹に『病院に着替えなどを届けるのが容易じゃないの』と言っていたそうです。ただ、私には、まったくそのそぶりは見せませんでした。私が退院して、すぐに女房が体調を崩し、肺気胸と診断されました。女房の場合は、肺がだんだん小さくなって、固まって、機能しなくなる症状で、診察を受けた時は手の施しようがないと言われました。しかし、女房は、かたくなに入院を嫌がりました」
そのため、萩原さんは自宅療養を決断。
「お風呂に入るのも、トイレに行くのも、なにをするにも連れ添いました。トイレの中だけは1人になるため、ブザーを取り付けて、なにかあれば鳴らせるようにしました。しかし、そのうち、トイレも連れ添いが必要になりました。困ったのは便秘です。ちょうど子どもを連れて実家に戻っていた娘が『仕方がない、私が指で出してあげる』と。介護老人保健施設で働いていた時に、見知っていることだったので、そのうち、私も手伝うようになりました」