福井「子ども感染増」示す衝撃データ なのに政治は無関心
変異株は子どもの感染が顕著――。福井県が公開したデータに衝撃が走っている。新型コロナウイルスについて「子どもは大丈夫」との間違った先入観を払拭し、子どもの感染問題に真剣に向かい合う時が来ている。
■人口割合より4%も高い
12日に開かれた県対策本部会議の資料によると、陽性者に占める10代以下の割合は第3波(昨年10月1日~今年2月28日)の10.6%に対し、第4波(今年3月1日~5月12日)は、21.4%と2倍超に跳ね上がる。
福井の人口76万6789人(2020年1月1日現在)のうち、10代以下は13万3675人だから17.4%。感染割合の21.4%は人口に占める割合を4%も上回っているのだ。数字上、子どもの感染が多いのは明らかだ。県に聞いた。
「最近は閉鎖された空間である学校でクラスターが起きています。4月には敦賀市で県内初の小学校クラスターが起きました。また、家庭内感染で幼児や乳児含めて家族全員が感染するケースがあります。これまではそんなことはなかったのですが」(新型コロナ感染拡大防止対策チーム)
経験したことがない事態が起き、変異株の威力をまざまざと見せつけられている様子だった。
福井県の濃厚接触者の陽性率は第1~3波の約2倍
文科省に福井の数字や状況を説明し、見解を聞くと、「全国的には子どもの感染の増加傾向は確認できませんが、地方によっては子どもの感染が増えているところはあります」(健康教育・食育課)と、地域レベルでの子どもの感染増を認めた。
■国会議員は無関心が過ぎる
西武学園医学技術専門学校東京校校長の中原英臣氏(感染症学)が言う。
「子どもには必ず同居者がいるので、同居者から子ども、子どもから同居者に感染します。子どもの健康はもちろん、同居の高齢者が感染し、重症化、死亡するケースも起きてしまう。特に地方は祖父母と子どもが一緒に住んでいる世帯も多いでしょう。子どもの感染対策は重要なのにおろそかにされている感は否めません。例えば、プール方式の定期検査はすぐにできるはずです」
県によると、福井の濃厚接触者の陽性率は43.1%で第1~3波の約2倍。このデータも家庭内感染の拡大を懸念させる数字だ。
ところが、国会議員は子どもの感染問題には無関心。16日の「NHK日曜討論」は与野党6人の政策責任者が出演したが、自民党の下村政調会長が「変異株は若い人にも感染が広がっている」と触れただけで、政策議論に子どもの「こ」の字も出てこなかった。
学校での感染を警戒し、自主休校を余儀なくされる児童は少なくない。ロシアンルーレットをするような気持ちで子どもを登校させる保護者もいる。
12歳未満のワクチンは世界に存在しない。子ども軽視の政治が続けば、未来は真っ暗だ。