会社員を辞めずに自分の能力をもっと生かせる時代になりつつある
本業=大手企業勤務/副業=酒造のWebマーケティング(※モデルケースとして)
パーソル総合研究所が発表した「第二回 副業の実態・意識に関する定量調査」(2021年8月)の調査結果によると、副業者の受け入れを現在行っている企業は23.9%。現在受け入れていないが受け入れ意向がある企業23.9%と合計すると47.8%と、半数近くの企業で副業者の受け入れに前向きな姿勢ということがわかった。
また、採用経路については知人・社員からの紹介が約40%となっていて、令和になっても口コミは強いことがわかる。そして、今回はパーソルキャリア株式会社「Loino(ロイノ)」の事業責任者である鈴木健一さん(37歳)にさらにつっこんで話を聞いた。Loinoは都市部の人材を「副業」という形でマッチングする地方特化型の副業マッチングプラットフォームだ。
「『他の会社等の業務に従事しないこと』という規定が削除され、副業・兼業ができる(厚労省の)モデル就業規則が配布されてから3年が経ちました。企業は副業をすること、受け入れることに広がりを見せ、会社として副業に肯定的な支援体制を築いている企業では、副業者が正社員並みに活躍を見せているケースもあります。特に『新規事業立ち上げ』『新たな知識・ノウハウの獲得』『オープンイノベーションの促進』などで副業者による創発がよく見られるようになりました」
副業人材を活用する理由とは
具体的な事例も聞いた。まず1つ目は、150年以上続く酒蔵に大企業の人材が副業で関わったケース。
「副業者はITやWebマーケティングが得意で、自分でもよくインターネットで買い物をする方です。今までWeb施策を行っていなかった酒蔵さんに対して、既存顧客向けにメルマガ配信を提案。もし自分が買うなら、どんなメールを受け取りたいか。文面内容や配信スケジュールなどの具体的なアドバイスを助言して、月2回の配信と効果測定を行いました。メルマガ配信前は、1日1~2件だった注文が10件から15件にまで伸びました。今後はあえて、ハガキやDM(ダイレクトメール)を行う予定です。Webだけではなくニーズもくみ取った形です」
普段からSNSに慣れ親しんでいる人材で、スマホでの写真撮影スキルや文章作成能力を生かした仕事だ。事例をもう一つ聞いた。
「某有名ECモール運営会社に勤める方が、健康食品メーカーに対してECでの売り上げ向上を目的にコンサルティングしたケースです。ECの仕組みを熟知しているからこそ、ECモールへの登録方法だけでなく販売促進につながるサイトのブラッシュアップまで提案し、結果、売り上げに貢献することができました」
副業人材を活用する理由を訪ねたアンケート(表)では、高度なスキルや希少スキル、良い刺激になるなどの回答が目立つ。鈴木さんに聞いた2つの事例からわかることは、実はこのスキル内容や刺激は、案外自分にとっては日常のことだったりする。DX(デジタルトランスフォーメーション)というワードが独り歩きしているが、Zoomを導入したり、Faxでの受発注をやめてメールに切り替えたり、WebサイトをPCだけでなくスマートフォン向けにもするような仕事もまだまだたくさんあるようだ。
「より活躍の範囲を広げていきたいと思い、ウズウズしている会社員は多い。そうかといって、一気に転職や独立というわけでもない。そんな人材を歓迎する企業も多いのです。コストをかけて正社員で優秀な人を求めるより、副業者とライト(軽め)に仕事を始めてみることが企業側としても可能になってきましたね」
あまり拘束されずにノウハウを提供する仕事(副業)は、月額3万円から10万円といったところ。今年は副業がますます当たり前になるだろう。