【Q】がんで余命いくばくもない父と同居している女性と揉めそうで…
両親が離婚してだいぶ経ちます。今年で80歳になる親父はその後、10歳以上離れた女性と一緒に住んでいますが、末期のがんになり、もう長くありません。親父のことは諦めています。困っているのは一緒にいる女性です。籍は入っていませんが、一緒に住んでいる家の名義の一部は親父のものです。亡くなったら親父の分は私が相続します。遺言書があるかわかりません。放棄する気はなく、法定相続分だけもらえればいいと思っていますが、揉めたら面倒くさい。今から気が重いです。 (会社員・50代)
【A】物欲に駆られ、エゲツない息子にならぬよう理性的な行動を!
お父さまがどういう遺言をなされるつもりかわかりませんが、ともに暮らした女性には相当の気遣いをなされるはずではと推察します。そうすることは夫婦同然であった男女の仲では常識といえるマナーです。お父さまは末期がんの闘病の日々で、一緒に暮らしていた10歳年下の女性にどれほどお世話になったことでしょう。そうしたことを考えれば財産の処分はお父さまがなされたいように、その意思を尊重することは子供のあなたさまにとっては当然の配慮ではないでしょうか。
ぜひとも物欲に駆られ、エゲツない息子とならぬよう理性的に行動なされてくださいませ。
私が中学3年の時に母親と別れて家を出た父も8年後、がんで逝きましたが、余命いくばくもなくなったとの知らせを聞いて、入院している病院に見舞いに行くと、痩せ衰えて骨と皮ばかりになった父は鎮痛剤を打たれ、ベッドの上で朦朧となって横たわっていましたが、私を見ると、「抱いてくれ」と両手を伸ばしてきたのです。ベッドから抱き上げると目をカッと見開き、「このままくたばってたまるか。今に見ていろ」と吠えました。
それは元気だった頃に父が酔うと常套句としていた懐かしいセリフだったのです。そばで介護をしていた父より随分と若い女性が頬を流れる涙を拭っていて、父はその女性に目をやると「このひと(女性)には大変お世話になった、おまえからもお礼を言ってほしい」と絞り出すように言葉を吐いたのです。
「ご苦労かけました」と頭を下げると女性は「私の方こそお父さまにご迷惑をおかけしました」と目頭を押さえられました。
この時、父の最期を心安らかなものにしてくれたこの女性への感謝の気持ちで胸がいっぱいになったのです。
父はそれから1週間ほどで天に召されました。葬式の後にわかったことは、その女性のまだ幼い3人の子供たちを、父は傘修理の行商をしながら懸命になって働き養ったということです。
このことを知って、晩年の父の日常は決して寂しいものではなかったのだと安堵しました。
あなたさまが今、気にかけられることは法定相続分の銭勘定よりも、自分をこの世に誕生せしめてくれたお父さまへの最後の親孝行に、心を配られることです。「面倒を見てくださっている女性に、お父さんなりに経済面からの恩返しをすることに無条件に同意します」とのメッセージを届けられてはいかがでしょう。さすればお父さまは「さすが我が息子よ、自分の人生は間違いではなかった」と喜ばれるに違いありません。
「親孝行、したい時には親はなし」といいますが、あなたさまのお父さまはご存命なのですから、この機会に後悔せぬようできる限りの親孝行をなされるのがご自身の身のためでもございます。
◆悩み相談募集 村西監督への相談、怒り、悩みを募集しています。ハガキに郵便番号、住所、氏名、年齢、性別、職業、相談内容、電話番号を明記のうえ、〒104-8007 日刊ゲンダイ「村西監督相談」係まで。メールは<fudoutoku@nk-gendai.co.jp>まで。
◆連載が単行本になりました。 Amazonでも好評発売中です!
「全裸監督が答える不道徳で世界一まっとうな人生相談」
(発行:日刊ゲンダイ 発売:講談社)