加藤登紀子さんが続ける新聞の切り抜き 「毎日しなければならないこと」が自分を食い止める
加藤登紀子さん(2)
加藤さんの自宅の棚にはいま、一番大きなサイズのスクラップブックが500冊近く並んでいる。2002年7月、夫の藤本敏夫さんが58歳で亡くなって以来、続けている新聞の切り抜きだ。
「彼が新聞の切り抜きをものすごくする人だったんですよ。病院で入院しているときも切り抜いて……本当に小さな記事まで取っておく人だったので、彼がいなくなった寂しさもあって、切り抜きを始めたんです」
国際社会と政治、環境問題、文化と3つのジャンルに分け、1年間でひとつのジャンルのスクラップブックが8冊ほどになる。3つのジャンルで年間24冊だから、20年強だと500冊くらいになる。
「わたしにとって切り抜きはすごく良かったですね。例えば環境問題の情報にしても、それまでは彼(藤本さん)を情報源として頼りにしていたところがあった。彼がいなくなっちゃったんで、それなら、きちんと勉強しなきゃいけないと思ったんです。テーマを分けて、朝、起きると新聞をチェックして切り抜き、整理しておく。
この20年の間に3.11の大震災を含めて、いろいろなことがあったので、切り抜いたものはすごく価値があると思いますね。事件が起きたとしても、だいたいあらまししか覚えてないじゃないですか。けど、物事はディテールがすごく大事。物に書いたり、しゃべったりするときもディテールが必要だからすごく役に立っています」