著者のコラム一覧
田中幾太郎ジャーナリスト

1958年、東京都生まれ。「週刊現代」記者を経てフリー。医療問題企業経営などにつ いて月刊誌や日刊ゲンダイに執筆。著書に「慶應幼稚舎の秘密」(ベスト新書)、 「慶應三田会の人脈と実力」(宝島新書)「三菱財閥 最強の秘密」(同)など。 日刊ゲンダイDIGITALで連載「名門校のトリビア」を書籍化した「名門校の真実」が好評発売中。

今年の中学受験もSAPIX“独り勝ち”…名門校が進学塾の顔色を伺う逆転現象が発生

公開日: 更新日:

「今年の中学受験もサピックス(SAPIX)の独り勝ち。この状況は当面続きそう」と話すのは長年、受験業界を見てきた学習塾経営者。今年の開成中学合格者419人のうちサピックス出身者は274人(占有率65.4%)。麻布中学は365人中197人(54.0%)、筑波大学付属駒場中学は128人中81人(63.3%)だった。

「首都圏の難関中高一貫校はサピックスが制圧しているといっても過言ではない。ここに来なければ難関校には合格できないというイメージが出来上がり、より優秀な生徒が集まる好循環を生み出している。合格者数は進学塾にとって最大のアピールポイントなのです」(前出の学習塾経営者)

 他の4大進学塾の開成中合格者を見ると、早稲田アカデミー124人、四谷大塚121人、日能研48人と、かなり健闘しているように映る。これにサピックスの合格者数を合わせると567人。開成の実際の合格者総数をはるかにオーバーしている。

「早稲田アカデミーと四谷大塚は提携していて、どちらも同じ合格者をカウントしているケースが多い」と四谷大塚の元スタッフは説明する。

 ここに4大進学塾以外の数字も加えると、中学校によっては実際の合格者数の2倍を超えていることもめずらしくない。公益社団法人の全国学習塾協会は「受験直前の半年のうち継続して3カ月以上在籍」している生徒を合格者としてカウントできる条件としている。守らない場合は消費者庁から改善命令が出ることになっているのだが、それでも「ルールを破る塾が少なくない」(同)という。

 一方、サピックスの関係者は「合格者にはテスト生や各種講習生は含めず、厳密に計算している」と強調。それだけに、発表するデータへの信頼も厚く中学受験トップの地位をより確固たるものにしている。学校サイドもサピックスの存在は無視できなくなっている。

■優秀な生徒集めには不可欠

「90年代後半ぐらいから進学塾の動向に影響される部分が大きくなってきた。世紀が替わる頃からサピックスが台頭。不本意ながら、こことの交流は優秀な生徒集めに必須となってきている」

 こう話すのは麻布の元教師。進学塾がどこをターゲットにするかによって、名門校の人気をも左右する時代になってきたのだ。かつては情報が欲しい塾の側が学校側に頭を下げる構図だったが、今はそれが完全に逆転している。進学塾が後援するイベントに呼ばれれば、各校の校長も積極的に顔を出すようになった。

 サピックスが毎年発行する「中学受験ガイド」には、開成や麻布など首都圏の難関私立中高一貫校の大半が広告(1ページB5判)を出稿。名門校が進学塾の顔色をうかがうというのは本末転倒の気もするが、「少子化の時代に生き残るために学校側も必死にならざるをえない」(麻布元教師)のが現実なのである。



◆田中幾太郎の著書「名門校の真実」」(1540円)日刊現代から好評発売中!

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