旧五菱会系闇金組織「カジック」のスキーム 犯罪ノウハウは若者たちへと拡散し“進化”
2003年11月21日、大阪府警は名古屋空港へ向かう公海上の民間航空機内で、フィリピンから強制送還された男性A氏を逮捕した。
当時27歳のA氏は、特殊詐欺の源流といわれる旧五菱会(現・山口組清水一家)系闇金組織「カジック」の幹部のひとりだった。
カジックは20~30代の若者を実動部隊にしていた。一説に1000店舗といわれた「職場」では、求人広告を通じて採用された従業員が働き、東京ドームを借り切って店舗対抗の野球大会を開催したり、女子従業員をハワイやグアムへ海外旅行に行かせたりするなど、大企業も真っ青の福利厚生を実施していた。
A氏も、最初は一介の従業員に過ぎなかったが、携帯電話を活用した闇金の無店舗営業を発案して収益拡大に貢献。数十店を束ねる幹部に出世したという。
その一方、グループの要職は暴力団組員や不良上がりの幹部が占め、巨大な組織を統率していた。従業員の中には、彼らの後輩に当たる暴走族やカラーギャングの元メンバーもいた。
警察のカジック摘発がピークに達していた頃、2人の従業員に会って取材したことがある。関東の元暴走族とギャング出身者で、いずれも20代初めだった。