「住みやすい街選びガイド」が明かす"マンションの暗い未来"…資金不足で大規模修繕ができない(田中和彦)

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令和4年(2022年)の計画では、資金がショートするはずはなかったのですが、この2年であっという間に、修繕積立金が足りなくなってしまった。管理会社とマンションの管理組合が連携して資金管理していたはずなのに、人件費と建築資材が高騰。そのスピードについていけなかったのが問題です」

 こう語るのは、都内23区の一角にある大型マンションの管理組合理事だ。マンションの区分所有者にとって、「大規模修繕」は常に隣り合わせの切実な課題だ。マンションは、分譲、賃貸にかかわらず建設されてから15年、30年という区切りで「大規模修繕」を行う。それ以上の築年数を過ぎ、老朽化したマンションは、可能であれば「建て替え」が行われることもある。

 東京カンテイが22年に発表したレポートによると、建て替えされるマンションは築40年以上、50年未満が一番多く、築年数40年以上のマンションは「建て替え予備軍」といえる。その棟数は23年末で136.9万戸だが、33年には274.3万戸、43年には463.8万戸と、毎年10万~20万戸のペースで増加する。当然、建て替え事例も増えているだろうと思うが、実は、それほど多くないのが現状だ。

■建て替えがうまくいくマンションはごく一部…そのワケは?

「建て替えがうまくいったマンションの多くは、階数が低い、敷地が広い、そして、容積率が未消化である場合です。つまり、建て替えることで、現在より広い建物が建築できたものが多い。そのようなマンションは、建て替え前から増えた面積を新たに分譲することで建築費の全部、または一部を賄うことができ、金銭的な負担が少なくなるために所有者の合意形成が取りやすいのです。しかし、現状でも容積率いっぱいいっぱいにマンションが建築されているため床面積が増やせなかったり、分譲時からの法改正等の理由で、逆に現在の床面積すら確保できなったりと、建て替え困難な物件が少なくありません。また所有者の高齢化が進み、資金や健康等の理由で建て替えの合意形成が困難になる物件も増えているのです」(大手デベロッパー関係者)

 こうした背景から、できる限り建て替え時期を後送りさせる必要が出てくる。そのためには、いかに"建物を長生きさせるか"が重要になる。具体的には、大規模修繕が必要になってくるというわけだ。

 しかしその大規模修繕も、区分所有者にとっては悩みが尽きない。冒頭で紹介したように、大規模修繕工事で頭を抱えている分譲マンション管理組合が急増しているためだ。

 そもそも大規模修繕は住民とってビッグイベント。住民で形成される管理組合にとって、マンションの大規模修繕は15年以上経って初めて体験することだ。いくら管理会社がサポートしてくれても、どのように修繕するかの基本計画、資金計画、施工業者の選定など、さまざまな事項について決断をしていかなければいけない。当然、大きなプレッシャーがかかる。

 ところが最近、大規模修繕を阻害する新たな要因が増えているという。

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