「俺ね、経営者なんですよ」慰謝料を拒否する夫のバカげたプライド。妻を“勝手に逃げだ”と非難する心理
俺はなんにも悪くない!
「冷酷と激情のあいだvol.258〜女性編〜」では、5年前に離婚をした元夫から一方的に悪口を言われ続けている里香さん(仮名)の苦悩をお届けしました。
元夫のシンジさん(仮名)は、いまだに元妻との共通の知人を中心に「離婚の原因は全て妻。妻が悪い」と言い続けるのでしょうか。
【冷酷と激情のあいだ~男性編~】
「俺、なんにも悪くないのに悪者に仕立て上げられて離婚したんですよ。本当に不愉快です。
弁護士が入って離婚協議しました。他の人はわからないでしょうけど、俺はかなり酷い目に遭いました」
シンジさんの結婚生活は、わずか2年。そのうちの1年弱の期間は、すでに別居をして離婚協議に入っていたので、実際に夫婦として二人で暮らしたのは1年ほどです。
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手切れ金だと思って諦めた
「元妻は、俺の言動をモラハラだ、経済的DVだとか言い続けて、弁護士も懐柔し、俺が悪いことにして別れたんですよ。だからお金も、俺が払う形で別れたんですよね。
最初は元妻の弁護士が『慰謝料を払え』って言ってきたけど、俺は悪いことをしていないから慰謝料なんて払うわけないじゃないですか!
だから最終的に『解決金』っていう名目にして、俺はカネがあるから、もう手切れ金だと諦めて払うことにしただけなんです」
経営者としてのメンツがある
不本意な別れ方だったため、シンジさんが過去の結婚にこだわり続けています。今でも、当時を振り返ると強烈な不快感がこみ上げてくると話します。
「いまだにスッキリしないですね。俺はなんにも悪くないのに、一方的にモラハラ夫だ、DV夫だと言われて…。
俺ね、経営者なんですよ。しかも地元で商売をしているんです。だからちょっとしたことが命取りになりかねない。イメージってすごく大事なんです。
『生活費も渡さないモラハラ夫だ』なんて、噂が回ることだけは、絶対に阻止しないと」
シンジさんは元妻と直接話をする気はないものの、過去の結婚生活を知る人たちには「悪いのは妻」だと認識してほしいと強い口調で続けます。
悪いのは元妻
「もしも変な噂が元妻サイドから回ってきたら、たまったものじゃありませんよ。俺は悪くないって周知させるためにも、これからも元妻の批判は続けますよ」
自分の行動は、あくまで自己防衛策。リスクヘッジの一環だと、シンジさんは主張します。
「『夫婦の問題はどっちもどっち』なんてよく言われますけど、俺らの場合はそういう話じゃないんです。悪いのは、元妻。そもそもね、俺は別れる気なんて、なかったんですから。
俺が元妻よりも13歳も年上だったから、離婚って聞くと、みんな俺が悪いと思うじゃないですか。
みんなに真実を知ってもらわないと、やってられないですよね。もう一度言いますけど、俺は悪くないです。
生活費だって渡していたし、ちゃんと夫としての役割は果たしていました。そこから勝手に逃げたのは元妻なんです」
◇ ◇ ◇
恋人同士であれ、夫婦であれ100%同じ価値観を有する男女は稀です。ましてや交際前の男女となれば、なおのことです。少しのすれ違いが、大きな溝に発展することも少なくないのが異性間における現実でしょう。まさにこれこそが、男女関係における醍醐味にもなれば致命傷にもなる“冷酷と激情”のはざまなのかもしれません。
(並木まき/ライター・エディター)