受動喫煙防止 大手・新規事業者を排除する飲食店規制の不可解

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罰金最大50万円

 受動喫煙防止対策を強化するとの触れ込みで厚労省が今国会に提出をもくろむ健康増進法改正案の全容が明らかになってきた。医療施設や小中高、児童福祉施設、大学、官公庁はもっとも厳しい「敷地内禁煙」。体育館、老人福祉施設、職場、サービス業施設、ホテル、飲食店は「原則屋内禁煙」(喫煙専用室でのみ喫煙可)となっている。

 厚労省案のポイントは飲食店規制の内容だ。同省の発表やその後の報道によると、飲食店は「原則屋内禁煙」だが、資本金5000万円以下で客席面積100平方㍍以下の既存店は、店頭表示の義務付けと20歳未満の立ち入り禁止条件を満たせば例外的に喫煙できるとしている。逆に①資本金5000万円超の大手②新規事業者は店舗面積に関係なく喫煙を認めない。さらに加熱式たばこも規制対象に加え、当分の間、喫煙専用室または加熱式たばこ専用の喫煙室内でのみ喫煙可能とした。

資本金での線引きには業界団体から抗議の声

 さて、問題点を整理してみよう。まず資本金の多寡による選別だ。飲食店経営の多くは中小・零細事業者で、厚労省は例外対象となる店舗は55%程度と試算しているが、そもそも前提となる「資本金5000万円」の根拠が明らかでない。

 線引きによるトラブルも予想される。業界団体の関係者はこんな懸念を指摘する。

「全国に約1300店舗展開している大手のコーヒーチェーン店があります。このうち直営の300店舗は本部の管轄ですから資本金は5000万円超、つまり喫煙専用室を設けない限り禁煙となります。

 一方、残りの1000店舗はフランチャイズのオーナー経営者ですから資本金は5000万円以下が大半で、例外が適用されます。仮に大きな通りを挟んで両者の店舗があった場合、片方は吸えて、もう一方はダメ。でも、お客さんには資本金のことは分かりませんから、〝あっちで吸えたのに、なぜこっちはダメなのか〟といった無用なトラブルを招きかねない。現場に混乱をもたらすだけですよ」(日本フードサービス協会)

 例外規定が適用される店舗においても、20歳未満は客も従業員も立ち入り禁止となっているが、これも問題がある。

「飲食業界はどこも深刻な人手不足が続いています。喫煙可能な店となったはいいが、20歳未満禁止といった条件が足かせとなってパートやアルバイトなどの従業員を確保できなくなる可能性がある。経営者や店長の負担が増えるばかりとなってしまう」(飲食店経営者)

 施行後の大手チェーン店への経済影響も懸念される。

「新規事業者は適用外」は将来的な全面禁煙化をにらんだもの

 改正法施行後に新規営業した店は、例外規定は適用されない。これも問題だ。参入障壁が低い飲食業界には、サラリーマンからの転身組や定年退職後の起業組も少なくない。そうした人々にとってはスタート時点で「禁煙店」にするか、多額の投資を伴う喫煙専用室設置を選ぶしかなくなってしまう。

 どんな形態の店を運営するのか。新規事業者の自由のはず。同じ面積で既存店は規制がなく、新規だけ規制するというのは不条理。営業の自由や職業選択の自由に抵触するのではないか。

「新規を適用除外にするという政策は、将来的な全面禁煙化をにらんだものでしょう」(受動喫煙問題を取材するジャーナリスト)

罰則は最大50万円。誰が取り締まるのか

 罰則の内容、適用も疑問だらけだ。「喫煙専用室が基準に適合しない」「灰皿を撤去しない」など対策を怠った施設管理者には最大50万円、禁煙に違反した喫煙者には最大30万円の過料を科すという厳罰主義は、やり過ぎだろう。受動喫煙防止条例を全国に先駆けて施行した神奈川県の罰則は、最大5万円の過料である。厚労省案の過料はどこに根拠があるのか。

 罰則は、都道府県が指導しても改善されない悪質な場合のみ適用するとしている。日常的な監視、チェックは地方自治体レベルで行うことになるのだろうが、限られた人員ですべての飲食店のチェックが可能だろうか。

「結局は客や他店などからの通報、密告ということになるのではないか。ベラボーな過料も問題ですが、監視社会・密告社会の到来につながりかねないことの方が問題です」(前出のジャーナリスト)

 厚労省は今後、自民党の厚労部会での議論などを経て3月に閣議決定したうえで、今国会に法案提出する構えだが、あまりにも問題点、疑問点が多すぎる。法案のベースとなる「基本的考え方」を大きく変更した以上、業界団体や国民各層の声を聞くことからやり直すべきではないだろうか。

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