池田清彦氏「緊急事態条項で国民管理体制に突き進む恐れ」

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超閉塞社会の危険な罠(下)

 ――東京五輪開催をめぐってもゴタゴタ続きです。

池田 “埋没コスト”がもったいないからと政府は五輪を強行する構えですが、思い切って損切りすべきですよ。原発と一緒ですね。これまでかけてきた費用が無駄になると言って存続させて、一度でも事故が起きたら、そのコスト負担は比較にならない。五輪開催を強行して感染が拡大したら取り返しがつかないことになる。

 ――日本が中止を言い出すと莫大な違約金が発生するという指摘があります。

池田 日本の都合ではなくコロナ禍が理由なのだから、大義があります。国際司法裁判所に訴えられたとしても、払わなくて済むはずですよ。

 ――国民の7割以上が延期、中止を望んでも、政府は決断ができない。

池田 トップが責任を取りたくないからです。利権でお金を儲ける人がいることもあり、菅首相も小池知事もやめると言えなくなっている。

 ――コロナ禍と政府の迷走に翻弄されて1年以上が過ぎました。この間に国民は、多くのことに気付いたと思います。

池田 パンデミックは人為的なコントロールが難しいということをつくづく思い知らされた。エビデンスに基づかない思い付きの対策をいくらやっても逆効果です。飲食店の時短営業は逆に密を生み出した。アベノマスクやGoToは“焼け太り”しか考えていなかった。この間の政府の対応で、もっとも欠けているのは検証です。何が効果的だったのか、何がダメだったのかを客観的に検証するシステムを構築しないと、同じ失敗を繰り返すだけですよ。

 ――コロナ禍対策に乗じて憲法に緊急事態条項を盛り込むため、改憲に向けた動きも見られます。これに賛成する国民も少なくない。

池田 一部の人たちは今の対策では生ぬるいから、もっと厳しい措置が必要だとして緊急事態条項に賛成しているのでしょうが、今の法律を運用すれば対応できる。改憲は全く必要ない。自民党は安易に改憲に突き進むと、自分たちがいつか政権を失ったときに、どういうことになるか考えた方がいい。

 ――コロナ対策にかこつけて緊急事態条項が盛り込まれたら、国民は政権の思いのままに管理されることになりませんか。

池田 戦前、国民の体力増強を目的に厚生省が設置された経緯があります。この先、改憲に向かったりすれば、ナチスの優生思想のように健康じゃないことはバッシングされる。酒やたばこをはじめ国民の楽しみは奪われ、清く正しく生きることが求められる管理社会に突き進みかねない。健康、安全、環境が御旗になり、役に立たない人間はいらないという世の中になってしまいますよ。 

 ――現状に話を戻します。ワクチン接種は主要国でもっとも遅く、医療現場は逼迫と、国の研究開発、医療行政への疑問の声もあります。

池田 国立大の独立行政法人化や公立病院の病床削減など、教育と医療をないがしろにしてきたツケがいまあらわれている。ワクチンも治療薬も国内で作れず、医療現場では看護師をはじめ人が足りない。グローバルキャピタリズムにばかり顔を向けているうちに、国力がどんどん落ちているのです。コロナ対策でいえば、トータルの社会コストを考えれば、初期段階で投与する治療薬の開発を急ぐべきです。医療現場に対しては看護師さんの給料を倍にするとか待遇を良くしないと。本当に必要なリソースにこそ資金を注入すべきです。

 ――最後に読者に、ひと言お願いします。

池田 国の言うことと反対のことをやりなさい。そして、次の総選挙には必ず行って意思表示をしなさい、ということを強調しておきたいですね。 =おわり

(構成=山田稔/ジャーナリスト)

▽池田清彦(いけだ・きよひこ) 1947年東京都足立区生まれ。1971年東京教育大学理学部卒業。東京都立高校教諭を経て、1977年東京都立大学大学院博士課程(生物学専攻)修了。山梨大学教育学部教授、早稲田大学国際教養学部教授などを歴任し、現在は早稲田大学名誉教授、山梨大学名誉教授。『同調圧力にだまされない変わり者が社会を変える。』『どうせ死ぬから言わせてもらおう』『したたかでいい加減な生き物たち』『「現代優生学」の脅威』など著書多数。

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