コロワイド会長「M資金」詐欺初公判 両者真っ向から対立

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31億円「M資金詐欺」初公判<1>

 牛角や大戸屋を傘下におく外食大手チェーン「株式会社コロワイド」(神奈川県横浜市)の蔵人金男会長が被害総額約31億円を騙し取られたとする詐欺事件の初公判が3月25日、横浜地裁で開かれた。

 これまで日刊ゲンダイで報じてきた、いわゆるコロワイド会長M資金裁判は、東京地裁でこれまで3回開かれてきた、蔵人氏を原告とする民事裁判である。こちらは刑事裁判である。

 この事件は2020年6月11日に武藤薫、X、Yらが、神奈川県警捜査2課に逮捕されたことで公になり、有名経営者が巨額の金額を騙しとられたということで世間に驚きを与えた。

 初公判前に、XとYは不起訴になり、武藤薫被告だけが起訴された。そのため本稿では不起訴になった2人の名前は伏せて報じる。

 刑務官に連れられて法廷に現れた武藤被告は、頭が白くなっているものの、流行りのノースフェイスの黒いジャケットをまとい、眼鏡など身につけているものをみてもカネ回りはそれなりに良かった様子が伺えた。

 検察の冒頭陳述による詐欺容疑の内容は、武藤被告が蔵人氏に、存在しない太平洋戦争の戦勝国が管理している2800億円の資金(基幹産業育成資金、これがいわゆるM資金)が提供されると誤信させて、17年春頃から18年秋にかけて、約31億円を振り込みさせたというもの。

 しかし、検察の冒頭陳述後、裁判官から「起訴状で違っているところはありますか」と尋ねられた武藤被告は、「蔵人金男さんとは一度も会っていません。その会っていない蔵人さんからお金をとるということは、到底ムリな話ですので、いまの起訴状に対して全面的に争い、罪状を否認します」と全面否定をした。

■IMFで働いていたマック・アオイ

 以下、検察側説明から事件を再構成する。女性検察官がとても早口だったので、メモしきれていない点があることを予めお断りしておきたい。なぜ人は荒唐無稽な詐欺話に騙されてしまうのか。これは他人事ではないのだ。

 そもそも04年にXとYが出会い、Fはジャパンドリームという会社を設立する。しかし融資を受けるには、一般社団法人のほうがいいとMにアドバイスされ、09年に一社アジア商工農経済協力会議所を設立する。後にこれが3人の活動拠点になる。

 10年に入り、Xは武藤被告に出会う。Xはこのときすでに武藤被告から基幹産業育成資金の話を聞かされていたとされる。つまり武藤被告は10年頃から基幹産業育成資金のスキームを構想していたということになる。

 X、Yとの動きとはまったく別に13年、蔵人氏は知人から、基幹産業育成資金の話を聞かされて、武藤被告を紹介される。このとき武藤被告はマック・アオイと名乗り、IMF(国際通貨基金)で働いていたと話したとされる。もっともらしい肩書きだ。

 武藤被告は当時、オイルビジネス投資にカネが必要であったという。一方、説明を聞いた蔵人氏は1500億円(のちに2800億円に拡大)の基幹産業育成資金の提供を受けることを決意。

 そこで資金提供のために必要な資金として、13年に日本円で2億8000万円相当の英ポンド、14年に日本円で1億8000万円相当の米ドルをマック・アオイこと武藤被告の指示する口座に振り込む。武藤被告はオイルビジネスにそのカネを注ぎ込む。

 しかし資金提供の話は前進せず、マック・アオイからさらなる金銭を要求もされたため、蔵人会長はマック・アオイこと武藤被告と距離をとるようになり、話は立ち消えになった。

 武藤被告は検察の冒頭陳述に対して、蔵人会長と会ったこともないと初公判の法廷で証言していた。この時点ですでに検察側と真っ向から対立している。

■M資金第2ラウンドへ

 一方16年頃、武藤被告はXと知り合い、基幹産業育成資金の仲介事業をもちかけるようになる。

 17年2月、XにYのアジア商工農経済協力会議所をアジア経済協力会議所に名称変更させ、東京丸の内の郵政ビルディングの貸会議室に事務所を開設する。会員証やパンフレットなどの小道具も整えた。

 この場所に蔵人氏はたびたび呼ばれ、架空の話を説明されて合計31億円のカネを振り込んでいくことになる。検察の説明によればXとYも最後の最後まで武藤被告の詐欺話に気づかず行動していたということになる。この検察の説明には違和感を抱く。

 同年の春になり、ふたたび蔵人氏に基幹産業育成資金の話が知人からもちかけられる。蔵人氏に話をもちかけた知人について検察側は名前を伏せているので不明だが、いずれ明らかになるのかもしれない。

 そうして蔵人氏は詐欺の沼に向かって歩き出す。郵政ビルディングの貸し会議室を訪れ、XとYと対面してしまうのだ。振り込み詐欺やフィッシング詐欺、マルチ商法でも詐欺に合う人間のリスト、いわゆるカモリストがあるというが、騙される人間は繰り返し狙われる。

 蔵人氏は武藤被告が考え出した基幹産業育成資金のスキームをXから説明され、4月に入会金360万円を、8月に事業計画書の審査料として200万円をそれぞれ振り込む。

 Fは武藤被告がつくった会員証を蔵人氏に郵送する。これでうまく進むと思いきや、9月5日頃、蔵人氏は13年当時の話をXから持ち出されて、資金提供に暗雲が漂う。

■エリザベス女王の前でのスピーチを断った蔵人会長

 というのも、13年の“M資金詐欺第1ラウンド”で、蔵人会長はマック・アオイから基幹産業育成資金の提供を受けるためにはエリザベス女王の前で英語でスピーチをしなければならないと説明されて、断ってしまっていたのである。

 そのことで蔵人氏は基幹産業育成資金のブラックリストに載ってしまったとXから指摘されたのだ。蔵人氏は、それで資金提供が頓挫してしまったのだと引け目を感じたのか、納得してしまったらしい。まさかXがその話を知っているとも思わなかっただろう。蔵人氏の弱みつくように、1億3000万円を支払えば、資金提供は復活すると目の前でXが言う。

 10日後、蔵人氏は1億3000万円を振り込んでいた。 =つづく

(取材・文=平井康嗣/日刊ゲンダイ)

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