著者のコラム一覧
小林佳樹金融ジャーナリスト

銀行・証券・保険業界などの金融界を40年近く取材するベテラン記者。政界・官界・民間企業のトライアングルを取材の基盤にしている。神出鬼没が身上で、親密な政治家からは「服部半蔵」と呼ばれている。本人はアカデミックな「マクロ経済」を論じたいのだが、周囲から期待されているのはディープな「裏話」であることに悩んで40年が経過してしまった。アナリスト崩れである。

PayPayが国内初の参入だが…デジタル給与払い普及への壁はまだまだ高い

公開日: 更新日:

「デジタル給与サービスを提供する資金移動業者は、改正労基法施行規則で8つの指定要件をクリアしなければならない」(メガバンク幹部)という。まず金融庁に登録した上で、厚労相の指定を受けなければならない。かつ指定を受ける資金移動業者は、資本金や自己資本比率など銀行と同程度の財務要件が課された。さらに新たに口座残高上限額を100万円以下に設定している資金移動業者に限定することや、破綻時に口座残高全額をすみやかに労働者に保証する(保証期間と契約)ことなどの要件が課される。また、月1回は手数料なくATMなどで換金できることも条件となっている。

 これらの要件をクリアするためにかかるコストはバカにならない。国内の資金移動業者は昨年6月末時点で78社を数えるが、コスト負担からデジタル給与サービスに参入できるのは大手に限られるとみられている。

 また、ここにきて更なる壁が出現した。日銀による金融正常化だ。日銀は長年の金融緩和策から脱却し、利上げに踏み出している。これまでの金利のない世界から金利のある世界へと転換するわけだが、「デジタル給与サービスの受け皿となる資金移動業者のアカウント残高は預金ではないため、金利を付けることができない。これでは銀行の給与振り込みの方が得だ」(メガバンク幹部)となる。

 さらにデジタルマネーで支払われる給与は、犯罪者にとっては格好の標的となる可能性もある。2020年に発生したドコモ口座を介した銀行預金の不正流出問題に類似したシステムの抜け穴を突いた犯罪も起こる可能性は捨てきれない。デジタル給与サービスには高い壁が立ちはだかる。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  2. 2

    渋野日向子に「ジャンボ尾崎に弟子入り」のススメ…国内3試合目は50人中ブービー終戦

  3. 3

    ソフトバンクは「一番得をした」…佐々木麟太郎の“損失見込み”を上回る好選定

  4. 4

    沢口靖子「絶対零度」が月9ワースト目前の“戦犯”はフジテレビ? 二匹目のドジョウ狙うも大誤算

  5. 5

    巨人・桑田二軍監督の電撃退団は“事実上のクビ”…真相は「優勝したのに国際部への異動を打診されていた」

  1. 6

    阪神「次の二軍監督」候補に挙がる2人の大物OB…人選の大前提は“藤川野球”にマッチすること

  2. 7

    国分太一が「世界くらべてみたら」の収録現場で見せていた“暴君ぶり”と“セクハラ発言”の闇

  3. 8

    恥辱まみれの高市外交… 「ノーベル平和賞推薦」でのトランプ媚びはアベ手法そのもの

  4. 9

    後藤真希と一緒の“8万円沖縄ツアー”に《安売りしすぎ》と心配の声…"透け写真集"バカ売れ中なのに

  5. 10

    沢口靖子も菅田将暉も大コケ不可避?フジテレビ秋ドラマ総崩れで局内戦々恐々…シニア狙いが外れた根深い事情