元グーグル日本法人代表 辻野晃一郎氏が喝破 無責任体質が経済停滞とデジタル化の遅れを招いている

公開日: 更新日:

辻野晃一郎(元グーグル日本法人代表 )

 政権与党の自民党は裏金事件の実態解明から逃げ、首都のトップも学歴詐称疑惑への説明を避け続けている。不祥事が続出する大企業トップも説明責任を果たさない。こうした無責任体質はどこからくるのか。その根本原因こそが日本の経済停滞、デジタル化の遅れを招いている──と喝破するのがこの人。ソニーで22年間働き、グーグル日本法人社長を務めた後に独立創業した企業家の立場から、日本の問題を読み解いてもらった。

  ◇  ◇  ◇

 ──東京都知事選は小池百合子知事が約292万票を獲得。3選を果たしました。選挙戦をどうご覧になりましたか。

 公務優先と偽って街宣を減らし、テレビ討論会を避けるなど、小池知事の逃げの姿勢が際立っていました。学歴詐称疑惑や、巨額の裏金づくりに手を染めていた自民党の萩生田光一都連会長との蜜月関係について、直接批判されるのを嫌って逃げ続けたのでしょう。一方で、公選法違反の疑いで刑事告発を受けていますが、現職の立場を利用した選挙活動も目に余りました。ただ、当選したとはいえ、4年前の知事選で獲得した366万票から74万票も減らしている。小池知事の正体を見抜き、信任しなかった人が増えたのは良いことです。

 ──同日開票の都議補選では自民党が2勝6敗と惨敗でした。

 国民はまだ裏金事件を許していないということです。その裏金自民と小池知事が水面下で結託していたことを、もっとクローズアップすれば結果は違ったかもしれません。そういう意味では、学歴詐称疑惑をはじめ、大手メディアが小池知事の実態を大きく報じなかったことは問題でしょう。

 ──裏金事件を巡っては、改正政治資金規正法が公布されましたが、改革に後ろ向きな自民党のせいで抜け穴だらけです。

 自民党としては改正法の成立をもって、この問題を幕引きしたいのでしょうけど、本当にチャンチャラおかしい。パーティー券購入者の公開基準を20万円超から5万円超に引き下げましたが、これは今まで20万円だったブラックボックスが5万円になっただけの話。ブラックボックスを4つ集めれば何も変わりません。使途公開義務がない政策活動費にしても、10年後の領収書公開が付則に盛り込まれましたが、何の意味もないでしょう。「裏金づくりをやめません」と宣言しているようなものでまさに「裏金維持法」です。肝心の真相解明も全く進んでいない。

 ──政財癒着の原因である企業・団体献金も温存されました。

 経団連会長が自民党への献金を「社会貢献だ」と正当化していました。しかし、企業というのは利益を上げることが使命で、無駄金をただ寄付するとは考えにくい。中には、世のため人のためにお金を出す企業もあるでしょうが、多くは「見返り」を期待して献金します。そうであれば贈収賄と変わりません。

■企業献金はやましいビジネス

 ──献金する企業にいい思いをさせる政策を採用しているのですね。

 いわゆる利権政治です。本来、政治家に金を渡して何とかしてもらおうなど、企業家失格です。私が勤めていたソニーの共同創業者、井深大氏は経団連を「話し合い(談合)の場」と言って好きではなかった。「皆で渡れば怖くない」とは真逆で、人が行かない方向に新しい市場を求めて突き進んでいくタイプでした。そうしたソニースピリッツのようなものが本来の企業家精神なのであって、政府に税金をまけてもらうとか、補助金に頼ってうまくやろうと考えること自体、ビジネスをする人間としてやましい。そんな態度では、結局は産業全体の沈滞にもつながってしまうでしょう。税金への向き合い方にしても、ソニーのもう一人の創業者盛田昭夫氏は、米国のユニタリータックスという不公平税制に真っ向から対峙して、結局撤廃させました。 

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  2. 2

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  3. 3

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  4. 4

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  5. 5

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  1. 6

    国分太一問題で日テレの「城島&松岡に謝罪」に関係者が抱いた“違和感”

  2. 7

    今度は横山裕が全治2カ月のケガ…元TOKIO松岡昌宏も指摘「テレビ局こそコンプラ違反の温床」という闇の深度

  3. 8

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    大谷翔平のWBC二刀流実現は絶望的か…侍J首脳陣が恐れる過保護なドジャースからの「ホットライン」