宮田律
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宮田律現代イスラム研究センター理事長

1955年、山梨県甲府市生まれ。83年、慶應義塾大学大学院文学研究科史学専攻修了。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院修士課程修了。専門は現代イスラム政治、イラン政治史。「イラン~世界の火薬庫」(光文社新書)、「物語 イランの歴史」(中公新書)、「イラン革命防衛隊」(武田ランダムハウスジャパン)などの著書がある。近著に「黒い同盟 米国、サウジアラビア、イスラエル: 「反イラン枢軸」の暗部」(平凡社新書)。

トンキン湾事件を彷彿させる 米“サウジ攻撃”イラン犯行説

公開日: 更新日:

 9月14日、サウジアラビア東部のアブカイクとフライスの石油施設が攻撃を受けた。2015年からサウジアラビアなどアラブの「有志連合」の空爆を受けるイエメンの武装勢力フーシ派が10機によるドローンで攻撃したと声明を出したが、ポンペオ米国務長官は、ドローンがイエメンから飛ばされたことを否定し、イランによる攻撃だと断定した。

 ところが、その翌日にはイスラエルとともに、イラクのシーア派民兵組織によるドローン攻撃だと主張するようになった。ポンペオ国務長官は、イランのイスラム共和国打倒と、イランとの戦争を視野に入れてきたが、6月の日本のタンカー攻撃についてもイランの犯行と断じた人物である。イラクのシーア派民兵組織の関与を指摘するようになったのも、シーア派の国であるイランが支援して行われた攻撃であるということを強調したかったに違いない。

 イスラエルのネタニヤフ政権は、親イランのイラクのシーア派民兵組織が隣国シリアで活動するようになって、イランの脅威が自国に差し迫っていることを強調するようになり、8月下旬にイラク北部のシリア国境近くでイラクの民兵組織「人民動員隊(PDU)」の施設を空爆した。このPDUは、IS(イスラム国)との戦いで主要な役割を担った組織で、イラク政府による支援を受け、15万人のメンバーを抱える。イラク政府軍の補助部隊のような存在で、対ISでは、米軍と実質的に共闘関係にあり、現在イラクに駐留する兵力5000人の米軍は、PDUなどISと戦う民兵組織に訓練を施すが、イスラエルは米軍と同盟する勢力にまで攻撃を加えたことになる。対外的な脅威をネタニヤフ首相が強調したのは、9月17日に行われたイスラエル総選挙を前に自らの政党への求心力を高めたかったこともあるだろう。イラクのマフディー首相は16日、ポンペオ国務長官との電話会談の中でイラクから攻撃を行われたことを強く否定した。

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