「退職後は追いません」ぷっつりと途絶えた男性の足取り
プルトニウム製造係長 竹村達也さん
動燃の総務部門でエリート街道を歩んできたOBは、竹村が失踪したことさえ知らなかった。竹村がいた東海事業所の総務課長を務め、核燃料からプルトニウムを取り出す許可をアメリカから取る交渉にも関わった人物だ。
私は、動燃の後身である日本原子力研究開発機構に電話した。広報部報道課の副主幹が対応した。失踪事件の概要と北朝鮮に拉致された疑いがあることを告げると、3秒ほど沈黙して言った。
「あー、そうなんですね」
副主幹が竹村のことを聞いたことは初めてらしく、質問事項を伝えた上で面会取材することになった。
6日後、東京都千代田区にある機構の広報部報道課で、広報部の次長と副主幹が対応し、次長が質問に答えた。回答したのは、竹村の入社と退職の年月日、最後にいた部署が技術部検査課だということだけだった。
「国の研究機関で独立行政法人なので、独法の個人情報保護法に基づかなければなりません。本人の同意なしに軽々にお話しすることはできません」