石原慎太郎は成熟を拒絶した「永遠の中2病」 軽薄さを三島由紀夫も見抜いていた
作家の石原慎太郎が亡くなった。享年89。間違いなく戦後を代表する人物だったと思う。もちろん、悪い意味において。石原は保守でも右翼でもない。石原自身も「僕そんな右じゃない。真ん中よりちょっと左ですよ」と述べているが、戦後民主主義の敵対者という世間のイメージとは逆に、戦後社会の屈折した「気分」にひたすら迎合してきたポピュリストだったのだと思う。
数々の差別発言や暴言も「大衆の汚い本音を代弁するオレってカッコいい」といった自己愛に基づくもので、思想的な裏打ちがあるわけでもない。差別主義者というより「かまってちゃん」。社会の常識、建前にケンカを売ることで注目されたかったのだと思う。
アメリカが嫌い、中国が嫌い、皇室が嫌い、官僚が嫌い……。口を開けば、改革、変革、中央支配体制の打倒と騒ぎたてる。要するに強者、権威、既存の体制に反発することで、大衆の無責任な改革気分に訴えかけてきた。こうした姿勢は文壇デビュー作「太陽の季節」から一貫している。