検証「ニッポンの死刑」(下)犯罪被害者遺族の感情は決して一様ではないことを忘れてはならない

公開日: 更新日:

 殺害される様子はあまりにむごく、磯谷さんの話に言葉を失った。「残された遺族が前を向いて生きていくためにも、死刑は必要なのです」という訴えは重い。

■「同じような被害者を出さないで」

 だが、被害者の考えは決して一様ではないことも事実だ。1997年に8歳の息子をひき逃げ事故で亡くした片山徒有さん(67)は、死刑には反対の立場をとっている。懇話会の委員も務める片山さんは、7月の会合で「求められるのは厳罰ではなく、同じような被害者を出さないこと」と述べ、罪を犯した人の更生が重要と強調した。

 片山さんは「犯罪は社会の痛みそのもの」とし、加害者が罪と向き合い、過ちを繰り返さないようにすることを考えるべきと話す。

 どちらが正しいというわけではない。ただ、被害者の感情は決して一様ではないということは忘れてはならない。被害者感情を理由に世論が死刑を続けるのは、一方的な決めつけとも言える。さまざまな被害者遺族の声を聞き、どういった支援が必要かを議論することが重要で、その取り組みは極めて不十分なのが現状だ。

(佐藤大介/共同通信編集委員兼論説委員)

最新の政治・社会記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の三振激減がドジャース打者陣の意識も変える…史上初ワールドシリーズ連覇の好材料に

  2. 2

    国民民主党から問題議員が続出する根源…かつての維新をしのぐ“不祥事のデパート”に

  3. 3

    党勢拡大の参政党「スタッフ募集」に高い壁…供給源のはずの自民落選議員秘書も「やりたくない」と避けるワケ

  4. 4

    「ロケ中、お尻ナデナデは当たり前」…「アメトーーク!」の過去回で明かされたセクハラの現場

  5. 5

    注目の投手3人…健大高崎158km石垣、山梨学院194cm菰田陽生、沖縄尚学・末吉良丞の“ガチ評価”は?

  1. 6

    夏の甲子園V候補はなぜ早々と散ったのか...1年通じた過密日程 識者は「春季大会廃止」に言及

  2. 7

    コカ・コーラ自販機事業に立ちはだかる前途多難…巨額減損処理で赤字転落

  3. 8

    巨人・坂本勇人に迫る「引退」の足音…“外様”の田中将大は起死回生、来季へ延命か

  4. 9

    高市早苗氏の“戦意”を打ち砕く…多くの国民からの「石破辞めるな」と自民党内にそびえる「3つの壁」

  5. 10

    「U18代表に選ぶべきか、否か」…甲子園大会の裏で最後までモメた“あの投手”の処遇