検証「ニッポンの死刑」(下)犯罪被害者遺族の感情は決して一様ではないことを忘れてはならない

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 殺害される様子はあまりにむごく、磯谷さんの話に言葉を失った。「残された遺族が前を向いて生きていくためにも、死刑は必要なのです」という訴えは重い。

■「同じような被害者を出さないで」

 だが、被害者の考えは決して一様ではないことも事実だ。1997年に8歳の息子をひき逃げ事故で亡くした片山徒有さん(67)は、死刑には反対の立場をとっている。懇話会の委員も務める片山さんは、7月の会合で「求められるのは厳罰ではなく、同じような被害者を出さないこと」と述べ、罪を犯した人の更生が重要と強調した。

 片山さんは「犯罪は社会の痛みそのもの」とし、加害者が罪と向き合い、過ちを繰り返さないようにすることを考えるべきと話す。

 どちらが正しいというわけではない。ただ、被害者の感情は決して一様ではないということは忘れてはならない。被害者感情を理由に世論が死刑を続けるのは、一方的な決めつけとも言える。さまざまな被害者遺族の声を聞き、どういった支援が必要かを議論することが重要で、その取り組みは極めて不十分なのが現状だ。

(佐藤大介/共同通信編集委員兼論説委員)

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