<第2回>モンゴル人力士の「値段」は?人身売買さながらでも「サーカスの人買い」と違う点

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「君が今度入ったモンゴル人力士か。うむ、うむ、大変だろうけど頑張れよ。少ないだろうけど、これを小遣いの足しにでもしなさい」

 ある部屋のタニマチは新しく入門したモンゴル人力士に目を細めると、財布から1万円札を取り出し、その場で手渡した。確かにタニマチが振る舞う額としては多いとはいえない。

 しかし、カネをもらったモンゴル人力士は1万円札を握る手をブルブル震わせて、「ア、ア、アリガトゴザマス!」と覚えたてのつたない日本語で叫んだものだから、タニマチの方がビックリ。もちろん、悪い気はせず、「そういう時は『ごっつぁんです』だろう」なんてニヤニヤしながら去っていった。

 モンゴル人にとって、1万円というのは家族4人が1カ月暮らせるだけの大金だ。力士は十両に上がるまでは給料が出ず、2カ月に1度、本場所手当が出る。幕下で15万円だが、入門したての序ノ口ではわずか7万円しかもらえない。

 それでも、故郷に仕送りをする彼らにとっては法外な収入だ。日本に来るモンゴル人力士の多くは出稼ぎ目的。ひと月に1万円ずつでも家族にとっては十分な仕送りになる。だからこそ、多くのモンゴル人力士の親は喜んで我が子を日本に行かせたがる。

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