鈴村裕輔
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鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大准教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部准教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

「スタバ事件」が象徴的 メジャーにはびこる“暗黙の差別”

公開日: 更新日:

 2人のアフリカ系米国人男性からトイレの利用を申し入れられた従業員は、商品を購入していないことを理由に断った。しかし、男性客が店内にとどまったため、不法侵入として警察に通報、2人は逮捕された。

 そして、一部始終を撮影した動画がインターネット上で公開されると、「白人の利用者だったら断られなかったはずだ」といった反応が起き、スターバックスは5月29日午後に全米8000店舗以上を休業し、人種問題に関する店員研修を実施すると発表したのだ。

 今回の出来事の背景には「同じことをしてもアフリカ系は断られ、白人は許される」という米国社会に依然として残る「暗黙の差別」がある。

 大リーグでも、「人種が異なり、同じ能力や実績を持つスタッフや選手がいたら、人種の違いが起用に影響する」といった類いの「暗黙の差別」がある。

 2009年以来、ワールドシリーズに進出していないヤンキースのブライアン・キャッシュマンが依然としてゼネラルマネジャーを務めているのは、経営者のスタインブレナー家と同じユダヤ系であることが大きく作用しているし、イタリア系のトミー・ラソーダが監督を務めていたころのドジャースにはイタリア系選手が少なくなかった。

 球団幹部の人事や選手の起用であれば、人々の日常生活には直接の影響はないかもしれない。

 それでも、「何で、あいつがまだいるんだ」と観客が不審に思うような事例が少なくないという点で、大リーグにおける「暗黙の差別」の根も決して浅くないのだ。

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