野村監督が指示 幻に終わったフォースボークと本盗の奇策
「奇策は弱者の戦法」
野村監督は、かつてこう言っていました。90年代のヤクルトが弱かったとは思いませんが、監督は常にさまざまな作戦を考えていました。
そのひとつが「フォースボーク」。走者一、三塁で相手投手が左の場合に限って使う奇策です。まず、一塁走者がいかにも盗塁を狙うぞという雰囲気を出して大きくリードを取る。そうやってマウンド上の左腕投手の警戒心を走者に向かせたところで、一塁走者がわざと転ぶ。あるいは、体勢を崩すのです。
しめた! と思った投手が一塁に投げる。この時、プレートから足を外してなければボークとなり、三塁走者は生還できるというわけです。もし瞬時に野手が気付いて声をかけようと思っても、試合中の大歓声の中では投手の耳には届きづらいものです。といっても、投手がひっかからなければ、それまで、という作戦です。
野村監督が就任して、実際にオープン戦で試したことがありましたが、公式戦では使わずじまいでした。こうした作戦は一度見せてしまうと、二度は使えない。ただ、なにかやってくるぞ、と投手に思わせるだけで効果がある。警戒するあまり、牽制球を投げにくくなれば、盗塁の成功率も高くなります。