大谷は驚異のOPS それゆえに高まる二刀流断念のタイミング

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 メジャーの打者を評価する指標のひとつに「OPS(On-Base Percentage plus Slugging Average)」がある。出塁率と長打率を加えたもので近年のデータ野球で重視される数値だ。

 OPS10割ならトップクラスのスラッガーの証し。昨シーズンのメジャーで、このOPSが10割を超えた選手は4人しかいない。トップは打率.351、13本塁打のソト(22=ナショナルズ)の11割8分5厘だった。

 オープン戦ながらこのOPSが17割8分2厘と、驚異的な数字を残しているのがエンゼルスの大谷翔平(26)だ。

■サイ・ヤング賞右腕から2戦連発の特大弾

 日本時間17日の対インディアンス戦で、昨季のサイ・ヤング賞右腕のビーバーからバックスクリーンを越える141メートルの特大弾。2打席連続本塁打の前日に続く4号本塁打を放った。

 オープン戦は19打数11安打(打率.579)、4本塁打、7打点。出場した7試合はすべて安打を放っている(数字は17日現在)。4本塁打はすべて中堅から左方向へのもの。「逆方向に打っているのがいい。すべてのスイングでボールを強くたたいている」とマドン監督は相好を崩した。

 そこへいくと、投手としては球速が注目されているだけではないか。オープン戦2試合に先発、計4回を投げて9安打6失点と安定感を欠いている。右肘靱帯を再建するトミー・ジョン手術から2年半。右肘は球速が160キロをマークするまでに回復したとはいえ、投げるたびに点を取られている。日本のプロ野球だから160キロという球速だけで通用したが、メジャーではそうもいかないのかもしれない。

 大谷は日本ハム時代から「投手より打者」と言われてきた。打者専念ならとんでもない数字を残す可能性もあるし、本人も投げること以上に打つことに関してアレコレ考えるという。

 それでも本人が打って投げての二刀流にこだわるのは、160キロの剛速球という人にない武器を捨てられないからだろうし、なにより先駆者でありたいという思いが人一倍強い。岩手の花巻東高時代に日本のプロ野球を経ずにメジャー挑戦しようと考えたのも、ドラフト1位クラスの高校生が直接、海を渡った前例がなかったからだ。

肉体の不安

 エンゼルスのいまの台所事情も、大谷の二刀流を後押しする。

 昨シーズンのチーム防御率5.09は、リーグ13位。オフにFAでキンターナ、トレードでカッブと先発を補強したものの、それでもまだ先発の層は薄い。マドン監督が大谷の起用に関して「投手優先」と明言するのも、投手陣の台所事情が火の車だからだ。

 とはいえ、大谷がこのまま二刀流を続けられる保証はどこにもない。

「現在のチーム事情を考慮すれば、投手として使わざるを得ませんが」とスポーツライターの友成那智氏がこう続ける。

「大谷の非凡な打撃センスを生かすのなら、野手に専念するのもひとつの選択肢です。先発での起用は週1回で、登板日前後は欠場するため当然、打席数は限られます。DH制を採用していないナ・リーグ本拠地でのインターリーグは代打でしか起用できないためなおさらです。二刀流は投打を並行して調整することが困難なうえに、特に投手は肩肘の大きな故障リスクを伴います。実際、大谷も肘にメスを入れましたから。フィジカルの負担を考えたら、二刀流を続けるのはマイナスでしかありません」

■打てば打つほど

 メジャーでは捕手のように負担の大きいポジションの選手が、30歳手前で一塁手などにコンバートされるケースは少なくない。打撃のいい捕手ほど、その傾向は顕著だ。今年7月で27歳になる大谷も、体力的にいつまでも二刀流をこなせるとは限らないのだ。

「今後、大きな故障をしようものなら、二刀流どころか選手としての価値を下げかねません。選手としての価値が下がるようなら、大谷は嫌でも投手を断念せざるを得なくなります。そうなる前に野手に専念した方がいい。メジャーで長く生き残ろうと思ったら、打者一本で勝負した方が得策です」(前出の友成氏)

 エンゼルスのチーム事情やマドン監督の考え方にしても、今後、変化する可能性は高い。

「エンゼルスの野手で長打力があるのはトラウト、レンドン、プホルスと右打者ばかり。一発のある左打者は大谷だけです。大谷が打撃で結果を残せば残すほど、マドン監督は打者として重宝するようになるはずです。マドン監督は合理的な考え方の持ち主で、それは選手起用にも表れている。大谷に代わる投手はいくらでもいますが、代わりが務まる左打ちの強打者はそうそういません。いまはチーム事情から投手優先と言っていますが、次第に投手に見切りをつけて打者に専念させたいと考えるようになるはずです」(前出の友成氏)

 ちなみに米メディアは「今季も投手で結果を残せなかったり、故障したりすれば打者に専念するしかなくなる」との見方が大半を占め、「今季がラストチャンス」という声も中にはある。

 二刀流断念のXデーは意外に早くやってくるかもしれない。

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