関脇・霧馬山鐵雄 “期待の新鋭”が語る「大関昇進」への意気込み

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入門8年でモンゴルに帰国したのは1回だけ

 ──18歳で来日していますが、高校を卒業した後は何をされていたのですか?

 当時は大学2年生でした(モンゴルには飛び級がある)。モンゴル相撲の強いスポーツ系の大学に行って、夏休みはモンゴル相撲の合宿もしてましたね。高校は14歳か15歳で卒業しました。

 ──モンゴル生まれの力士は首都ウランバートル出身が多いですが、霧馬山関は遊牧生活だったそうですね。

 小さい頃から馬に乗ったり、水場まで何キロもある水おけを往復して運んだり……そんな生活でしたよ。だから、足腰が強くなった? そうかもしれませんね。

 ──ちなみに、ご両親は今も遊牧生活ですか?

 そうですね。あっち行ったり、こっち行ったりしてるようです。

 ──幼少期から大相撲中継などは見ていたのですか?

 NHKの中継はモンゴルでも放送されていたので、子供の頃は見たり見なかったり……。ただ、相撲中継を見て「将来は大相撲の力士になりたい」と思ったことは、確か、なかったはずです。

 ──最初に来日したのも力士になるためというよりは、興味本位だったそうですね。

 日本で力士になるなんて、まったく思ってなかったですから。なろうと思って来たわけでもありませんからね。入門に気持ちが傾いたのは日本に来てからです。

 ──陸奥部屋での1カ月の体験入門で興味が出てきた?

 あの時はモンゴルから僕を含めて5人が来て、いろいろと力士になるためのテストをしました。そこでちょっとずつ、「日本で相撲をやりたいな」と思うようになったんです。5人いたのは最初の1週間だけ。テストが終わって一回、全員がモンゴルに帰っています。

 ──しかし、霧馬山関は翌2015年、単身、再び日本に来ました。

 今度は本当に力士になるため、ですね。

 ──ご家族の反応は?

 両親には「自分で決めろ。どんな道を選んでも応援する」と言われていました。反対意見はなかった。だから、僕は自分で決めて陸奥部屋に入門することに決めたんです。

 ──今では日本語も上手ですが、来日当初は大変だったのでは。

 それは僕だけじゃなくて、(外国出身力士は)みんな同じですよ。最初は周囲が何をしゃべっているかわかりませんけど、時間が経ってくると徐々にわかるようになってくる。言葉がわかれば、生活や稽古にも慣れてくる。そうしたらいろいろできるようになるし、相撲だってもっと楽しくなります。

 ──霧馬山関は力士になってから帰国したのは、2019年、新十両に昇進した時の1度だけです。

 4年ぶりに帰ったんですが、町もびっくりするくらい変わった。それからまた4年間、帰ってません。次にモンゴルに帰る時は、どれだけ変わっているのだろうというのは楽しみです。

■自分でも凄いなと思う

 ──外国出身力士の中には、頻繁に帰国する力士もいます。

 僕なんて丸8年で1回。1回帰って、1週間しか滞在してない(笑)。8年で1回、それで1週間。考えてみると自分でも凄いなと思いますけどね(笑)。ただ、頻繁に帰ろうとは思ってない。日本にいると、やることもいっぱいあるので。

 ──陸奥親方は「大関に昇進したら帰国してもいい」と話しています。前回も十両に昇進するまで、帰国は許されなかったそうですね。

 最初は寂しかったし、モンゴルに帰りたいと思ったこともありました。でも、早く強くなってほしいと思ったから、師匠はそう言ってくれたんだと思います。師匠は厳しいですけど、だからこそ、そのおかげでここまで来たかなとも思う。もし、師匠が優しかったら、自分はここまで来れなかったかもしれないですね。

 ──陸奥親方に教わったことで、印象的なものはありますか?

 何が、というより、入門した時から師匠の教え通りにやっています。まわしを取れ、頭をつけろ。すべて師匠の教えです。

 ──2019年には横綱鶴竜(現親方)が陸奥部屋に移籍。同郷の横綱の存在は心強かったのでは?

 本当にそうですよ。一緒に稽古をしたり、胸を出してもらったことは大きいですね。横綱と稽古をするタイミングなんて、それまではほとんどなかったですから。

霧島継承? 自分からは…

 ──そういえば、陸奥親方は「将来的に、霧島のしこ名を継がせてもいい」と話しているそうですね。

 いや、それは聞いたことないですけど……。

 ──「周囲の機運が高まったり、本人が希望すれば」とも話していました。

 おおー……。(驚いた様子で稽古場で周囲を見渡してから)自分からはなかなか言えないですよね。自分からは、さすがに(苦笑)。

(聞き手=阿川大/日刊ゲンダイ

▽霧馬山鐵雄(きりばやま・てつお) 1996年、モンゴル・ドルノド県出身。2015年に陸奥部屋に入門。19年に十両、20年に新入幕と出世を重ね、先場所は新関脇として初優勝。186センチ、143キロ。左四つの粘り強い相撲が持ち味。

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