単身で西ドイツ留学 プロ予備軍の群れに放り込まれ一本もパスが回ってこなかった
日本代表に選ばれるようになり、何度も海外遠征を経験したが、ひとりぼっちの外国行きは初めて。もちろんドイツ語も英語もチンプンカンプンや。それでも「サッカーに言葉はいらない。まあ~何とでもなるやろ」と鷹揚に構えていた。
いきなり面食らった。
放り込まれたのは、20歳前後の若きプロ予備軍たちの群れ。練習でも試合でも、彼らの頭の中にあるのは「好プレーを連発してプロのスカウトの目に留まりたい」ということだけ。日本からやって来たアマチュアのFWが、ゴール前でどんなに効果的な動きを繰り返しても、ただの一本のパスも回ってこない。
3日目だったか、4日目だったか、デアバルさんに身ぶり手ぶりで文句を言ったら「パスを出す側になればいい」と言われた。「しゃあないなぁ~」と思いながら中盤に下がり、奪うようにしてボールを持ってラストパスを出したり、自分で局面を打開してシュートに持ち込んだり。そういう作戦に切り替えた。
このことがストライカー・釜本にとって大きな大きな財産になった。


















