元阪急投手・山田久志“史上最高のサブマリン”の矜持「負けた時に記事になるのが真のエース」

公開日: 更新日:

 山田はそれを見て、スピード一辺倒のピッチングの幅を広げることを決意。新たな決め球としてシンカーに活路を見いだそうとした。当時、たまたまチームメートにシンカーの使い手として名を売っていた、同じアンダースローの足立光宏がいたことも大きかった。足立の投げ方を参考に山田はシンカーを会得し、76年にはキャリアハイとなる26勝をマーク、この年から史上初の3年連続MVPを獲得するなど、シンカーを武器に八面六臂の働きを見せた。

 山田自身、シンカーには今でも格別の思いがある。それだけに、山田以後シンカーの名手といわれた潮崎哲也(西武)や高津臣吾ヤクルト)の話が出ると、

「私のシンカーが本当のシンカー。彼らのシンカーはシンカーではない。チェンジアップだ」

 といって譲らない。

 山田は現役引退後、コーチや中日監督などを歴任し、現在は評論家として活動しているが、折に触れ、

「今、中継ぎのエースとか抑えのエースとかいうが、エースはチームに1人いればいい。チームメートからもファンからも認めてもらって初めてエースといえる。エースは勝つのが当たり前だから勝った時には記事にならない。負けた時に山田がやられたと記事になるのが真のエースなんだ」

 と自らの「エース哲学」を語っている。

(ライター・清水一利)

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    もしやり直せるなら、入学しない…暴力に翻弄されたPL学園野球部の事実上の廃部状態に思うこと

  2. 2

    「たばこ吸ってもいいですか」…新規大会主催者・前澤友作氏に問い合わせて一喝された国内男子ツアーの時代錯誤

  3. 3

    永野芽郁は疑惑晴れずも日曜劇場「キャスター」降板回避か…田中圭・妻の出方次第という見方も

  4. 4

    巨人阿部監督が見切り発車で田中将大に「ローテ当確」出した本当の理由とは???

  5. 5

    「高島屋」の営業利益が過去最高を更新…百貨店衰退期に“独り勝ち”が続く背景

  1. 6

    かつて控えだった同級生は、わずか27歳でなぜPL学園監督になれたのか

  2. 7

    JLPGA専務理事内定が人知れず“降格”に急転!背景に“不適切発言”疑惑と見え隠れする隠蔽体質

  3. 8

    「俳優座」の精神を反故にした無茶苦茶な日本の文化行政

  4. 9

    (72)寅さんをやり込めた、とっておきの「博さん語録」

  5. 10

    第3の男?イケメン俳優が永野芽郁の"不倫記事"をリポストして物議…終わらない騒動