ロッテ吉井理人監督の意外な「激情時代」 コーチの延々続く説教中に箸をバーン!殴りかからん勢いで…
「勝ったことはメデタイけど、あの辺はまだまだやなぁ」
「1勝したくらいで浮かれとったらアカンぞ」
そんな趣旨のことを吉井に向かってしばらく言い続けた。吉井も最初は、はい、はいと我慢して聞いていたものの、小言は延々と続いた。そばで聞いていた私も、さすがに初勝利を挙げたばかりのタイミングで言うことではないと思い始めた直後だった。
吉井は持っていたハシをバーンと投げると、その首脳に殴りかかるような勢いでイスから立ち上がった。
「やめろ! ヨシ!」
私はこう言って吉井を制したーー。
吉井は当時、気性が激しかった。いまでは自分を戒めてくれたその首脳に感謝すらしているという。「叱ってもらえること自体が幸せ。そういう人たちがいていまがあると思う」と話すように、引退後はコーチとして日本ハム、ソフトバンク、ロッテと行く先々で結果を出し、日本代表の投手コーチに就任している。
ともあれ「10.19」当時の吉井は感情の抑えが利かない状態だったように思う。川崎球場で行われたダブルヘッダーは連勝が優勝の条件。その1試合目、九回2死から梨田昌孝さんのタイムリーで勝ち越し、その裏の攻撃を抑えれば優勝マジック「1」。しかし、球審に際どいコースをことごとくボールと判定されたことが、吉井の気持ちをかき乱したのだろう。先頭打者を歩かせ、続く代打の山本功児さんにもボールが先行。2ボールとなった場面で、仰木さんがベンチから出てきたのが分かった。