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春日良一五輪アナリスト

長野県出身。上智大学哲学科卒。1978年に日本体育協会に入る。89年に新生JOCに移り、IOC渉外担当に。90年長野五輪招致委員会に出向、招致活動に関わる。95年にJOCを退職。スポーツコンサルティング会社を設立し、代表に。98年から五輪批評「スポーツ思考」(メルマガ)を主筆。https://genkina-atelier.com/sp/

名誉委員の“老害”たちが、堤義明の「空気による支配」を利用したのには理由がある

公開日: 更新日:
西武鉄道グループの元オーナーにしてJOC初代会長の堤義明氏(C)日刊ゲンダイ

橋本聖子が初の投票による選挙で日本オリンピック委員会(JOC)新会長となった背景には、「堤義明の天皇制」があった。民主的投票とは真逆の構造だ。

 私が言う「天皇制」とは山本七平が分析した日本教的「天皇制」のことである。単なる統治機構ではなく、日本社会に根ざす「空気による支配」構造である。天皇は自らの意思を明確に示すことなく、その「存在」自体が絶対視されることで、人々が忖度し、自発的に自己を調整し、行動する枠組みが形成される。これは政治的命令とは異なるが、構造的には極めて強い規範形成力を持つ。

 堤は具体的な命令を下すよりも、象徴的存在として君臨した。「堤が言っている」「堤の意向だ」とされる言説が、実際には本人の明言でなくとも行動の根拠となり、「空気」としての力を発揮した。これはまさに「天皇制」の現代的実践例と言える。

 日本スポーツ史において日本体育協会(体協)からのJOC独立が非常に重要であり、それは堤義明なくして成立しなかったというスポーツ界の認識が原点にある。1980年のモスクワ五輪参加を政府の圧力で実現できなかった傷を癒やすべく「スポーツが政治から自律すること」を求めた一大革命を成功させたからである。

 今回、この機能が作動したのは、田嶋幸三(日本サッカー協会前会長)が有力候補とみなされた文脈に実は、「JOCを日本スポーツ協会(体協の後身)に再び統合しよう」とする政治的力学が察知されたことがある。

 日本スポーツ協会会長は東京五輪2020で五輪大臣を務めた政府寄りの政治家・遠藤利明であり、彼が田嶋擁立を好意的に受け止めていた裏には 

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