ラグビー日本代表 27年W杯に向けて3つの大問題…屋根閉め切り“蒸し風呂”奇策も奏功せず
第2次エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)体制のラグビー日本代表(ジャパン)は、2年目の今季、7月5日に来日したウェールズ代表を24対29と破って好スタートを切った。しかし、連勝を狙った12日の第2戦では22対31と敗れて星を分けた。
ウェールズが、2023年のラグビーW杯フランス大会準々決勝アルゼンチン戦から続く連敗地獄に苦しむ中での"痛み分け"は、果たして27年W杯オーストラリア大会に向けた強化にどんな影響を及ぼすのだろうか。
スポーツライターの永田洋光氏がジャパンの問題点をえぐる。
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ジョーンズHCが昨季、大テーマとして掲げたのが「超速」、つまり世界のどのチームよりも早く考え、素早くボールを動かすラグビーだった。
しかし、超速が通用したのはどの試合でも最初の30分程度。ジャパンの動きに慣れた相手が対応し始めるとアタックは手詰まりとなり、"ガス欠"に陥った後半には防御が破綻した。テストマッチは4勝7敗で、7敗のうち6敗が40失点以上だった。
この結果、指揮官の手腕を疑問視する声が挙がり、2年目の今季、ジョーンズHCは結果にこだわった。
17連敗中のウェールズを午後2時キックオフという高温多湿の条件で迎え撃ち、SHに藤原忍という"超速の申し子"を得たこともあって、相手が疲弊した終盤に超速を起動させて逆転勝ちを収めた。これに味を占めたのか、2戦目はさらに高温多湿にこだわり、ノエビアスタジアム神戸の屋根を閉めきった"蒸し風呂状態"で連勝を目論んだ。
この試合では、フランスの強豪トゥールーズで高い評価を得た斎藤直人を藤原に代えて先発9番に起用。第1戦に続いてSOを担う李承信とともに、キックを織り交ぜながら"ノーマルスピード"で試合を運び、勝負所で藤原を投入して超速にギアチェンジーーというゲームプランが見てとれた。
ところが、斎藤ー李のハーフ団がゲームをコントロールするために蹴ったボール再獲得を目論むキックは、合計10回のうち再獲得できたのは3回だけ。しかも、ウェールズが、自陣からでもボールを大きく動かして積極果敢にアタックを仕掛けたために、ジャパンは予想外の消耗を強いられた。
それでも63分にCTBディラン・ライリーのトライと李のコンバージョンで22対24と追い上げたが、残る17分でガス欠を起こして逆転できず、逆に、ウェールズにダメ押しトライを奪われた。つまり、勝負所で超速へシフトチェンジーーというコンセプトが、依然として完成にはほど遠いことを露呈したのが第2戦だった。
■27年W杯を見据えた「世界ランキング12位の壁」
世界ランキング13位でウェールズとの連戦に臨んだジャパンは、第1戦の勝利で12位に浮上。ウェールズは同チーム史上最悪の14位まで順位を落としたが、それもつかの間、第2戦の結果、ジャパンは14位に転落。ウェールズが12位へと浮上した。
実はこの「12位の壁」が、27年W杯を戦う上で非常に重要なファクターになる。というのも、この大会から参加チームが24に拡大され、4チームずつ6つのプールに入ってプールステージを戦うことになるからだ。
各プールの組み合わせは今年12月に抽選が行われるが、その際、ランキング1位から6位までがバンド1、7位から12位がバンド2、13位から18位がバンド3、19位から24位がバンド4に分けられて、それぞれのバンドから1チームが同じプールに所属することになる。つまり、ジャパンが14位のままではバンド3に入ることになり、格上2チーム+格下1チームの厳しい組み合わせでプールステージを戦うことになるのだ。
もう一つ気になるのが、プールステージ突破に勝ち点が大きく関わってくること。