山本浩二さんの3ランにベンチでボクだけ放心状態、動けなかったワケ

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「なあ、相手バッテリーの心理状態を考えてみろ。あの場面ではホームランは最悪、四球も出せない。ならばどこへ投げてくる? アウトロー(外角低め)やろ。そのコースだけ強くイメージするんよ」

 浩二さんの頭の中には、「この状況なら、一流投手は絶対にここへ投げてくる」という深い読みと確信があるのです。さらに外角低めと読んで、そのコースを強烈にイメージすると、ピッチャーの手元からホームプレート上の外角低めのところまで一本の線がすーっと浮かび上がってくるらしいのです。そのラインに沿ってくれば、どんな球も打ち返す自信があるのです。

 84年8月7日、後楽園で行われた巨人戦でも、プライドを傷つけられた「ミスター赤ヘル」は真骨頂を発揮します。この日4番には衣笠さんが入り、不振の浩二さんは6番に降格。翌日の新聞によれば、「6番・山本浩二」は11年ぶりのことだったそうです。試合が始まると、鋭いシュートを武器に4年連続2ケタ勝利を挙げている西本さんと、3年目左腕の高木(宣宏)は尻上がりに調子を上げ、中盤から1点勝負の様相です。

 2-2で迎えた八回。古葉監督は無死二塁の好機に4番の衣笠さんに犠打を命じます。ここで王監督はマウンドに行き、「5番・長内(孝)敬遠、6番・山本勝負」を指示。プロ5年目を迎えたボクは、浩二さんの前の打者が敬遠されたシーンを初めて目にします。「前の打席までシュートでやられている。ここは絶対シュート狙い。三遊間を抜ければ勝ち越しだ」

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