上田綺世〈後編〉 ブラジル戦とイングランド戦のプレーを見て進化を強く感じた(法政大サッカー部元監督・長山一也)
「私の息子が入院していた時に…」
──そのタスクは森保一代表監督にも長年、求められてきたことです。
「そうですね。ずっと課題と言われていましたが、フェイエノールトで地道に努力を重ねたことで、今は強い相手に対してもひるむことはないですね。2025年10月のブラジル戦は今年3月のイングランド戦を見て、進化を強く感じました」
──その時は他にも話をされたんですか?
「実は息子がサッカーで大ケガしてしまって、入院していたんです。そこで『綺世から励ましてもらいたい』と伝えたら、喜んで話しかけてくれました。『何か質問はある』と彼の方から促してくれたりして、本当に優しい人間だなと心から嬉しくなりました。11月のボリビア戦にも招待してくれて、退院した息子を含めて家族4人で応援に行かせてもらいましたが、途中から入ってきて中村敬斗(スタッド・ランス)の3点目を見事にアシストした。同じような活躍を2026年北中米W杯でも見せてくれると信じています」
──長山さんの指導者キャリアの中でも上田選手と出会えたことは大きなプラスですね。
「これまで所属した富山や松本山雅の選手たちも綺世のことをよく聞いてきました。2024年に富山をJ2昇格へと導き、今は福岡でプレーしている碓井聖生なんかも綺世に近い能力を持っている。でもヘディングが全くできなかったんです。シンプルに先に飛ぶところからやらせましたけど、綺世を教えた経験があったから、いいアプローチができたところはあった。やはり貴重な経験になっています」
──伸びる選手は貪欲ですね。
「そうですね。綺世も碓井も聞く力がすごく高いと感じます。我々指導者がアドバイスをしたことをまずはトライしてみる勇気が彼らにはあります。一度、やってみて『これ違うな』と思ったら、また違ったことを取り入れるような形になるとは思うのですが、言われたことにまず反応するのが前進の第一歩。それは綺世からも学ばされます」
──2026年W杯の日本代表は上田選手が今、プレーするオランダとの戦いからスタートします。
「今はどの試合でも起点になってチームを勝たせられる存在になっているとは思いますが、やっぱり綺世のゴールが見たい。4年前は取れなかったので、まずはそこをクリアしてもらいたいですね。そこから得点を重ねて日本を上のステージへと導くのが彼の仕事。ケガをせず、本番に向けてコンディションを引き上げ、最高の状態でW杯に入ってほしいです」
(聞き手=元川悦子/サッカージャーナリスト)
▽上田綺世(うえだ・あやせ) 1998年8月28日生まれ、27歳。茨城・水戸市出身。鹿島の下部組織から鹿島学園高ー法政大。2019年7月、サッカー部を退部して鹿島入り。2022年7月、ベルギー1部サークル・ブルッフに完全移籍。2023年夏にオランダの強豪フェイエノールトにステップアップ。25/26年シーズンは開幕から3試合連続ゴールなど好調なスタートを切り、最終的に31試合25ゴールで得点王に輝いた。2019年5月に日本代表初選出。2021年東京五輪出場。翌2022年カタールW杯参戦。北中米W杯予選では主戦FWとしてゴールを量産。2025年11月のブラジル戦で逆転ゴールを決めて王国戦初勝利に貢献した。身長182センチ・体重76キロ。
▽長山一也(ながやま・かずや) 1982年4月1日生まれ、48歳。鹿児島・南さつま市出身。桜島中で元日本代表MF遠藤保仁の2学年下。帝京第三高(山梨)から法政大に進み、卒業後にJFL北陸、Jリーグ富山でプレーした。引退して富山で育成コーチを務めて2014年、法政大サッカー部監督に就任。関東リーグ1部昇格、総理大臣杯準優勝、2018年には全日本サッカー選手権で優勝に導いた。2023年から富山トップチームのコーチ。松本山雅トップチームのコーチを経て2026年1月、東海リーグ1部「FC.ISE-SHIMA」トップチームの監督に就任した。
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