都倉俊一さん(1)あのジャック・ニクラスと荒涼とした原野を歩き回った夢のような経験
都倉俊一さん(作曲家/前文化庁長官)
ジャック・ニクラスと一緒に仕事をしたことがあります。1988年から97年まで、ロンドンをベースにミュージカルやオペラの仕事をしていたのですが、そこへ東京の友人から電話がかかってきました。
「バンクーバーまで来てほしい。何とかニクラスという人に設計を頼んだから」
バブル絶頂期のこと、カナダにゴルフ場を造るというのです。
驚いてスケジュールを調整し、すぐにカナダにすっ飛んでいきました。
世界のトッププロとプロアマなどで一緒に回ったことも何度かありますが、我々世代にとってジャック・ニクラスやアーノルド・パーマーはやはり別格です。
友人は、ゴルフ場を造りたくてニクラスに設計を頼んだものの、ゴルフをしない。そこで、ゴルフが大好きな僕を呼んだのです。
バンクーバーのセントジェームズアイランドという島で待っていると、ニクラスがやって来ました。ゴールデン・ベア・エンタープライズのスタッフも引き連れてヘリでの登場でした。
セントジェームズアイランドは素晴らしい島なのですが、これからゴルフ場を設計して造るわけですから、まだ荒涼とした状態です。でも、そこに降り立ったニクラスは1日半、島を歩き回ると、ゴルフ場の構想を口にします。
「6ホールは林間コースで6ホールはリンクス。6ホールは丘陵コースにしよう。こっちには別荘地を造って……」
まだ何にもない荒れ地に立ち「ここをパー3ホールにする」などと口にしたのにも驚きました。
僕もクリエーターですから、物を作ることに対する想像力は理解できます。でも、いくら僕がゴルフ好きでもこの時はまったくコースのイメージができず、一緒に歩き回りながら本当に感心したものです。
実はこの計画、完成前にバブルがはじけてしまい、ゴルフ場は完成しないままでした。あの時、ニクラスの相手を全部僕がしていたので、その後もずっとあのコースのことが気になっていました。だいぶ経ってから、ダンロップフェニックスのプロアマでニクラスに再会したので聞いてみました。すると「あそこはアメリカの会社が買ってコースは完成したよ」とのことだったのでホッとしました。オーナーが代わってちゃんと出来上がっていたのです。
ニクラスと一緒に何もない原野を歩き回った経験は夢のようでした。いつか完成したコースを見たいなと思って、実は一度、バンクーバーに行った時に訪ねてみたことがあるのです。でも、今は完全なプライベートアイランドで進入禁止になっていました。将来一度は、あのセントジェームズアイランドに行ってみたいと願っています。 =この項つづく
(清流舎・小川淳子)



















