著者のコラム一覧
藤江直人ノンフィクションライター

1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「SPORTS Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーW杯は22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。

鈴木彩艶「急がば回れ」でつかんだプレミアの夢 マンU断ってから4年、流暢な英語を駆使して世界一へ

公開日: 更新日:

年齢に不釣り合いなほど自身を客観視する思考回路

「マンチェスター・ユナイテッドで試合に出られるレベルにあるのかどうかを考えたときに、日本で試合に出られていない自分ではなかなか難しいと思いました。ただ、現時点で行けなくても、数年後には必ず行きたいと考えているので、着実にステップアップしていくために今回の移籍を決断しました」

 彩艶は「何も考えなければもちろんマンチェスター・ユナイテッドに行きたいと思いました」ともつけ加えている。自身のプロキャリアを左右しかねない二者択一の選択を前にして、日本のことわざにある「急がば回れ」を実践した。

 年齢に不釣り合いなほど自身を客観視する思考回路。そこへ英語の習得という入念な事前の準備、さらにもともと秘めていた潜在能力の開花が融合された結果がシントトロイデンへの完全移籍、そしてセリエAのパルマ加入につながる。

 パルマ時代にも必死にイタリア語を学んでいる。そして数々のビッグセーブを演じて森保ジャパンのゴールマウスに君臨した北中米W杯をへて、24歳になった直後に憧憬の思いを抱き続けたプレミアリーグへの移籍を成就させた。

 アーセナル戦では武器である反応の速さを披露し、至近距離でのシュートストップにつなげた。しかし、何よりも衝撃を与えたのはワンステップで一気に敵陣深くまで飛ばすキック力。インタビュアーから最後にそれを問われた。

「あれは僕の強みですし、監督も僕のキックを期待してくれています。今日はゴールにつながりませんでしたが、次こそは自分の足でチャンスを創設したい」

 丁寧で紳士的な取材対応はファンの心も射止めた。もっとも今回のステップアップも、プレミアリーグ初の日本人キーパー誕生もすべてが通過点。世界一の選手を目指して、彩艶は自らが切り開いた道を地に足をつけてしっかりと歩んでいく。

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