「日本の奨学金はこれでいいのか!」伊東達也、岩重佳治ほか著
■サラ金よりも恐ろしい!? 日本の奨学金制度
大学で奨学金を利用したものの、卒業後その返済に行き詰まる若者が急増している。就職率の低下や失業率の増加から、2012年度の滞納者は、およそ33万4000人にも上っているのだ。“借りた金は返すのが当たり前”と思われるかもしれない。しかし、そもそもシステム自体に問題があると指摘するのが、伊東達也、岩重佳治ほか著「日本の奨学金はこれでいいのか!」(あけび書房 1600円)。いわゆる“貧困ビジネス”になり下がった、日本の奨学金制度の実態を明らかにしていく。
奨学金の中身は、近年大きく変わっている。1984年まで、日本育英会の奨学金には利子がつかなかった。
ところが、日本育英会法の全面改正により、無利子貸与から有利子貸与への移行が急速に進んだ。さらに、日本育英会は2004年までに廃止され、独立行政法人である日本学生支援機構が発足。同機構は奨学金制度を“金融事業”と位置づけ、民間資金も導入して有利子枠のみを拡大し続けている。
サラ金の最大の危険性といえば高金利だが、奨学金にもこれに当たる“延滞金”がある。延滞金は民法で定められた一種の損害賠償金で、基本的には5%とされているが、日本の奨学金では10%と規定しており、2012年度の利息収入は318億円、延滞金収入は43億円と、うまみのあるビジネスと化している。これを同機構が逃すはずもなく、消費者金融の取り立てもしている債権回収会社に取り立て委託をするという徹底ぶりなのだ。