ネット文化に警鐘を鳴らす最新刊が話題 藤原智美氏に聞く

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 さらに著者は、手軽に送受信できるネットの出現で、ことばが軽くなったことも指摘する。
「かつて石版という媒体には簡単な絵文字が刻まれ、紙とペンの登場で長いメッセージを記せるようになったように、僕はメディアはその媒体に適したことばを選ぶと考えています。ネットの特性のひとつはスピードです。それに照らし合わせると、内容やことばは推敲(すいこう)されず、また個として自立したことばは振り向かれなくなります。井戸を掘っていくような深いことばでなく、海のように広大だけど浅いことばをネットは選ぶわけで、すでにそうなりつつあります。また電子書籍が主流になれば、1画面で読み切れる短い文章が好まれるようになり、文学は消えていくでしょうね」

 ネット特有の「つながる」ことが幸せの証しのような風潮にも著者は首をかしげる。
「僕は『つながる』ということばに欺瞞(ぎまん)を感じますね。他者との上っ面の会話や技術としてのコミュニケーションで自分を支えることはできないものです。でも書きことばには自己対話力があり、また孤独に耐える力を得てきました。社会を形成することばの軸がネットことばへと移行しつつある今、僕たちにとっての問題は自分を支えることばの軸足をどこに置くか、なのです」

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