「虚ろな十字架」東野圭吾著

公開日: 更新日:

■11年前に一人娘を殺され今度は母親自身が被害者

 中学2年の少女と、1つ年上の少年の幼い恋のエピソードから、物語は始まる。

 それから20年の歳月が流れ、事件が起きた。女性フリーライターが、自宅マンション近くの路上で、刺し殺されたのだ。ほどなくひとりの老人が自首、金目当ての強盗殺人を自白した。

 殺された女性は、11年前、小学2年生の一人娘を失っていた。ほんの少し留守をしたあいだに、娘は自宅に押し入った強盗に惨殺されたのだ。被害者の遺族として苦しみ続けた彼女が、今度は自分が被害者になってしまった。

 彼女は娘の事件のあと、離婚。別の道を歩んでいた元夫は、いや応なしに事件とかかわることになった。そして、別れたあとの妻の人生をたどり始める。

 元妻はライターとして自立。万引依存症に悩む女性たちを取材したり、死刑廃止論に激しく異を唱えるなど、積極的に活動していた。彼女はなぜ殺されなければならなかったのか。事件は意外な展開を見せ、プロローグの幼い恋との深いつながりが浮かび上がってくる。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本は強い国か…「障害者年金」を半分に減額とは

  2. 2

    SBI新生銀が「貯金量107兆円」のJAグループマネーにリーチ…農林中金と資本提携し再上場へ

  3. 3

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  4. 4

    「おこめ券」でJAはボロ儲け? 国民から「いらない!」とブーイングでも鈴木農相が執着するワケ

  5. 5

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  1. 6

    侍Jで加速する「チーム大谷」…国内組で浮上する“後方支援”要員の投打ベテラン

  2. 7

    石破前首相も参戦で「おこめ券」批判拡大…届くのは春以降、米価下落ならありがたみゼロ

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    高市政権の物価高対策「自治体が自由に使える=丸投げ」に大ブーイング…ネットでも「おこめ券はいらない!」