「老いの入舞い」松井今朝子著

公開日: 更新日:

 物語の舞台は江戸麹町。主人公の北町奉行所の新米同心・間宮仁八郎は、麹町の「常楽庵」に立ち寄るように命ぜられ、かつて大奥で「滝山様」と呼ばれ今は尼僧となった年齢不詳の庵主・志乃を訪ねた。

 大奥仕込みの鼻持ちならない女に玄関先であしらわれると思いきや、仁八郎はなぜか志乃に気に入られる。あまりの居心地の悪さに今後関わりにならないようにしようと決意するのだが、事件のたびに空回りしてしまう仁八郎を、毎回志乃の知恵が救うのだった……。

 本書は、仁八郎が遭遇した奇妙な事件とその解決に関わる志乃の活躍を描いた江戸麹町事件帖。

 収録されているのは、祝言間近の娘が行方不明になる「巳待ちの春」、放火で父を殺されたと訴える娘の物語「怪火の始末」、はらみ女の死体が波紋を呼ぶ「母親気質」、奉公先から戻らない娘が水死体で発見された謎を解く「老いの入舞い」の4編。未熟ながら正義感に燃える仁八郎を見守る志乃の視線が温かい。

(文藝春秋 1500円)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    名球会入り条件「200勝投手」は絶滅危機…巨人・田中将大でもプロ19年で四苦八苦

  2. 2

    永野芽郁に貼られた「悪女」のレッテル…共演者キラー超えて、今後は“共演NG”続出不可避

  3. 3

    落合監督は投手起用に一切ノータッチ。全面的に任せられたオレはやりがいと緊張感があった

  4. 4

    07年日本S、落合監督とオレが完全試合継続中の山井を八回で降板させた本当の理由(上)

  5. 5

    巨人キャベッジが“舐めプ”から一転…阿部監督ブチギレで襟を正した本当の理由

  1. 6

    今思えばあの時から…落合博満さんが“秘密主義”になったワケ

  2. 7

    巨人・田中将大が好投しても勝てないワケ…“天敵”がズバリ指摘「全然悪くない。ただ…」

  3. 8

    高市早苗氏が必死のイメチェン!「裏金議員隠し」と「ほんわかメーク」で打倒進次郎氏にメラメラ

  4. 9

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性

  5. 10

    三角関係報道で蘇った坂口健太郎の"超マメ男"ぶり 永野芽郁を虜…高畑充希の誕生日に手渡した大きな花束